※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

1. 事案の概要(相談前の状況)

依頼者: Aさん(男性・会社員)
状況: 警察から自宅の捜索を受け、任意で取り調べを受けていた

とある日の朝、Aさんが出勤するために自宅を出ると、刑事課所属の刑事を名乗る人物から声をかけられました。Aさんが用件を確認すると、不同意性交等致傷罪の疑いがあるので調べさせてもらうと言われ、そのまま自宅を捜索されました。

その際、自宅にはAさんの配偶者が在宅しており、刑事はAさんの配偶者にも事情を説明し、捜索を継続しました。

その後、Aさんは警察署に同行するよう求められ、取り調べを受けましたが、刑事の説明によると、半年前にメンズエステ店で起きた事件であり、Aさんが強いて性行為に及ぼうとした、その際に被害者に怪我を負わせた疑いがあるとのことでした。

Aさんは過去に複数回メンズエステ店を利用したことがあったものの、刑事が説明した店舗を利用した明確な記憶はなく、また、強いて性行為に及ぼうとした覚えはありませんでした。

刑事から、検察官に事件を送致することになると言われ、自身での対応は難しいと考え、弊所にご相談に来られました。

2. 弁護士の対応と解決への流れ

当職からAさんに対して、事件現場となった店名に記憶は無いか、店舗のホームページを見てもらいながら確認しましたが、店舗のあるエリアには同じようなメンズエステ店が多数あることに加え、同エリアに存在する異なる店舗を複数回利用したことがあったことから、思い出せずにおりました。

ただ、Aさんが過去にメンズエステ店を利用した際、キャストが嫌がるにもかかわらず性行為に及ぼうとした事実だけは存在しないことは明確に記憶をしておりました。また、Aさんが過去に利用した店において、キャストの体に触れることは認められていなかったにもかかわらず、体に触れてしまったことがあることを思い出しました。

Aさんの記憶に基づく話では、本件の事実関係が一向に見えてこなかったため、被害者側の話を聞いてみようという話になり、当職がAさんの弁護人として警察や検察庁の対応と被害者との話し合いを行っていくことになりました。

Aさんは被害者がどこの誰であるのか全く思い当たらなかったことから、事件を担当する警察署に連絡し、被疑事実についてAさんの記憶を確認したが、思い当たる出来事が無い、ついては、被害者の方か弁護士など被害者の代理人がいるならば、弁護士限りで話を聞かせていただくことは可能であるか確認をいたしました。

この際、事実関係が明らかでないため仮定の話となるが、Aさんの行為によって、被害者の方に怪我をさせたのであれば、話し合いでの解決を希望している旨も伝えてもらいました。

上記連絡の後、警察からは、被害者には弁護士が就いていない、直接自分で対応するとのことだが、弁護士と電話で話をするのが怖いので、メールでやり取りをしたいと連絡がありました。そのため、被害者とされる方とメールでやり取りをすることになりました。

当職からはAさんの認識することをありのまま説明し、どのような行為があったのかを被害者の方から説明していただくことにしました。具体的な事実関係を伺ったうえでAさんに確認をすると、被害者の方が所属していたメンズエステ店を利用したことは何とか思い出せたものの、被害者の方が説明するような行為に及んだことは一切ないと明確に否認しました。

ここで被害者の方が説明した事実関係は、かなり暴力的に性行為に及ぼうとしたというものであり、明らかにAさんの記憶にはない内容でした。

次に、被害者の方に怪我の程度を確認するため、裏付けとなる診断書を出してもらうことになりましたが、比較的軽傷であることに加え、どのような経緯で当該怪我をしたのかが分からず、Aさんの行為によるものであるのかも明らかになりませんでした。

とはいえ、Aさんとしては、体に触れることが禁止されている店で、キャストの体に触れようとしたことがあり、その際に引っ搔くなどしてしまったかもしれないという考えから、もし、自分を接客した際に、怪我をさせて嫌な思いをさせたのであれば、話し合いで解決をしていきたいと考えるに至りました。

Aさんの考えに従い、当職から被害者の方に対しては、双方が認識している事実は大きく異なるが、もしAさんの行為によってご迷惑をお掛けしたのであれば、Aさんの認識する事実を前提として解決金を支払う意向がある旨伝えました。

しかしながら、被害者の方は、あくまで不同意性交等致傷罪が成立する事案であることを主張し、Aさんと示談をする意向はないと回答してきました。やむを得ず、状況を警察に報告すると、ほどなくしてAさんの事件は検察官に送致されてしまいました。

検察官に送致された後、Aさんは引き続き取り調べを受けましたが、事件について認識するところは変わらず、その旨の供述を続けました。途中、検察官から重大事件であるため、速やかに示談を成立させた方が良いという圧力もあったようですが、自身の認識と異なる事実を前提にして話し合いによる解決を目指す意向はなく、送致前と同様に、キャストに触れるといった行為によって迷惑をかけたのであれば、その限りにおいて示談をする考えはあるが、それを超えて、示談をする意向はないとのスタンスを維持しました。

当職が検察官とやり取りをしていくと、少しずつではありますが、Aさんの行為であることを裏付ける客観的な証拠がほとんど存在しないことが分かってきたため、結局、当方のスタンスは崩さず、もし話し合いができないのであれば、示談交渉の経過を報告書にして検察官に提出し、不起訴を求めようという方針に決まりました。

結局、被害者の方は、自身の認識に基づく示談の成立を諦めたようで、当方が提示していた少額の解決金を受け入れる旨の回答がありました。その後、被害者の方と合意書を取り交わし、解決金を支払ったうえで検察官に対して状況を報告したところ、不起訴となって終件となりました。

3. 解決結果と弁護士のコメント

請求額: 相手方から具体的な金額の請求はなし
刑事処分: 検察官送致されたものの不起訴
職場・家族: 介入前に、警察の捜査により配偶者に発覚

性風俗店における、いわゆる本番トラブルにおいて、警察が介入してくることは珍しいことではありませんが、これまで実際に事件として捜査が進められるケースはそこまで多くはなく、被害者の方が被害相談をしたことをきっかけにして、任意に取り調べを受けて終わるというケースがほとんどでした。

そんな中、本件では、弊所にご依頼をいただく前に、被疑者として警察の捜査を受けていた珍しい事案の一つであると言えます。不同意性交等致傷罪という重大な犯罪事実の存在が疑われたことも理由の一つであったかと思いますが、いずれにせよ、性風俗店でのトラブルにおいて、警察はそこまで積極的に介入して来ないであろうという楽観的な認識は改める必要があるでしょう。

過去に当職が対応した刑事事件化した案件を振り返ると、依頼者に事件の明確な記憶がないという点は本件と共通するものの、被疑者が酩酊状態にあって記憶がなかったという事情のほか、現場に臨場した警察官が現行犯逮捕をした、店舗型風俗店での事件であり、目撃者も複数いたといった事情があり、被疑者である依頼者から供述を得ることが期待できない反面、被疑事実の存在を裏づける証拠が多数存在したという点で異なります。

本件では、Aさんが過去にメンズエステ店を利用した際にアルコールなどの影響下にあったことはなく、強いて性行為に及んだという事実を明確に否認できたにもかかわらず、事件から半年も経過した後に、被害者側の被害申告に基づいて、家の捜索を行い、また検察官送致にまで至るなど、警察の捜査として適切であったのか疑問が残るところです。

全ての警察が同様の対応をする訳ではありませんが、若干フライング気味に捜査が進む可能性があることを留意し、性風俗店において本番トラブルを起こしてしまった際には安易に放置せず、店舗側と話し合いをするとともに、警察が介入してきた場合には、きちんと当方の認識するところを記憶に基づき説明しておくべきかと思います。

弁護士が代理人として介入している事実をもって、警察が慎重になるところもありますし、不測の事態には迅速な対応が可能になります。

性風俗店における本番トラブルの際には、速やかに弊所までご相談をいただければと思います。

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