※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
1. 事案の概要(相談前の状況)
状況: 性風俗店に携帯電話や身分証明書を没収された
とある日、関西の地方都市において、Aさんはデリバリーヘルスを利用することにしました。
性風俗店自体は利用したことがありましたが、この日に訪れた店舗は初めての利用であったようです。
ホテルで女性の到着を待つ間、Aさんはサービス提供時の音声を録音できないかと考えました。自宅に戻った際に、録音データを聞いて個人的に楽しもうと考えたようです。
Aさんは携帯電話の録音機能を作動させ、女性の到着を待ちました。
ほどなくして女性が到着しました。女性はAさんの不審な挙動を見て、録画されているのではないかと考えたようで、すぐにAさんを問い詰め、携帯電話を確認したところ、録音されていることが発覚してしまいました。
女性はすぐに店舗の従業員をホテルの部屋に呼び出し、無断で録音されていたことを説明しました。
店舗の従業員は、Aさんに対して、まず携帯電話と身元の分かる資料を出すよう要求しました。怖くなったAさんは、録音していた携帯電話、保険証、名刺を店舗の従業員に渡しました。
また、店舗の従業員から、親の連絡先と職場の連絡先を教えるよう言われ、これらも素直に伝えてしまいました。
店舗の従業員は、店のオーナーと話し合いをしてもらう必要があるので、後日、改めて店舗の事務所に来るようAさんに要求し、日時を指定したうえでAさんを解放しました。
不安になったAさんは、自分では対応できないと考え、弊所に電話で相談をしてきました。
2. 弁護士の対応と解決への流れ
Aさんが不安に感じている点を確認すると、携帯電話や身分証明書が悪用されるのではないかという点と、親や職場に連絡が行くのではないかという点でした。
前者に対しては、悪用される可能性が0であるということはできないが、きちんと店舗を構えている性風俗店が犯罪に該当するような行為に及ぶようなリスクを取ることは少ないのではないかと説明しました。
後者に対しては、Aさんと全く連絡が取れなくなるといったようなことがあれば、連絡をしてくる可能性も否定できないが、店舗と連絡を取っている限りは回避できるだろうと説明しました。
いずれにせよ、Aさんが自分で対応することは難しいと考えていたので、速やかに当職で引き取って店舗に連絡するべきであると考え、店舗との対応をお任せいただくことになりました。
ご依頼いただいた後、すぐに当職から店舗に連絡をしたところ、たまたま店のオーナーが店舗に居たので、そのまま話をすることができました。
まず、親や職場に連絡されないよう、当職がAさんの窓口として全ての対応を引き取ったことを説明しました。
次に、携帯電話を没収されている点について、Aさんの日常生活に支障をきたしているので速やかに返還されたいと申し入れました。
店舗のオーナーは、同種の事案については100万円程度支払ってもらっている、女性キャストを不安にさせたのだから支払は当然のことだと考えている、Aさんにも同額程度の解決金を支払ってもらいたい、解決金を支払うのであれば、携帯電話や身分証明書等は返還すると回答してきました。
たしかに、録音を未然に防げたものの、録音されていたかもしれないという事実は女性キャストを不安にするでしょう。今後も、録音されているのではないかと不安が継続することも想像できるところです。
しかしながら、100万円という金額の根拠は不明確ですし、未然に録音を防げたという事実を踏まえるのであれば、損害を賠償するという趣旨で解決金を支払うにしても高額に過ぎると言えます。
そのため、当職からは、女性キャストが入室後、すぐに録音に気づいたのでほとんど録音はされていない、かかる事実を前提とすると100万円という高額な解決金を支払うことは難しい、女性を不安にさせた点については謝罪の趣旨で少額だが解決金を支払う考えはあると回答しました。
店舗のオーナーは当方の提示に対して、当初かなり難色を示しておりましたが、女性を不安にさせたという点以外に損害があると証拠をもって確認できるのでなければ増額はできないと回答し続けたところ、最終的に当方の提示を受け入れると回答してきました。
結果として、解決金の金額は10万円ということになりました。
その後、合意書を取り交わして、少額の解決金を支払うという流れになったのですが、店舗が預かっている携帯電話、保険証、名刺については、店舗に取りに来て欲しいという話になったため、当職で店舗事務所を訪問し、直接私物を受け取り、終件となりました。
なお、合意書には、今後も親や職場に連絡が来ないようAさんの関係先には連絡しないという条項を念のため設け、さらに当職が店舗事務所を訪問した際にも、不要な連絡先情報を削除するよう重ねて申し入れておきました。
3. 解決結果と弁護士のコメント
解決額: 10万円
刑事処分: 警察の介入はない
職場・家族: 職場や家族に知られずに解決
性風俗店でのトラブルについて、弊所に多くお問い合わせいただくのは、いわゆる本番トラブルと盗撮トラブルになりますが、無断で録音をしてしまったところ、店舗側に発覚しトラブルになっているという盗聴のトラブルについても、少ないながらお問い合わせいただいております。
強いて性行為に及ぶ本番行為や盗撮行為と異なり、無断で録音する行為は直ちに犯罪に該当するという訳ではありません。
しかしながら、この点を知ってか知らずか、店舗側から警察を介入させることを示唆され、不安になって高額の解決金を支払ってしまうという方もおります。
もちろん、無断録音については、少なくとも民事上の問題が残りますので、放置をして良いということにはなりませんが、自身がした行為の法的な位置づけを把握したうえで適切な対応をしていく必要はあるでしょう。
本件では店舗側がAさんの携帯電話や保険証、名刺を預かっておりますが、性風俗店でのトラブルにおいて、身分証明書等を店舗側が預かるということはよくあります。
本件のように原本を預かるというケースは比較的少ないかと思いますが、免許証のコピーを取られたという話はよく伺います。また、親や配偶者などの親族、職場の連絡先を言わされたという話もよく伺うところです。
事例紹介の点でも触れた通り、預かった身分証明書等や携帯電話を悪用したり、職場に事実を伝えたり、親族に解決金の支払いを請求したりすることはレアケースかと思います。解決金を支払わせるというメリットに対して、店舗側が抱えるリスクが大きいことが理由です。
ただ、店舗側はきちんと身元が確認できるのであれば、最悪、訴訟などの法的な手続を利用することができますし、事実上も、身元を把握しているという点を圧力の一つとして利用できますので、今後も身分証明書等の提示を求められるということは続くと思います。
本件のように、携帯電話の本体を預けてしまうと生活に支障をきたすでしょうし、身分証明書の原本を預けるとなると、コピーを取られるだけよりも不安は大きくなるかと思います。
そのような事態を回避するのであれば、やはり身分証明書等を渡してしまう前に、弁護士にご相談をいただきたいところです。
弁護士が代理人として対応することを店舗側に伝えれば、連絡が取れなくなってしまうという店舗側の懸念を解消することもできるでしょうし、不必要に私物を渡して、事実上、交渉力が低減することも回避することができるでしょう。
どのような事案でも言えることですが、基本的には、弁護士が早期に介入するほどトラブルを早期に解決できる可能性が上がります。
状況によっては、法律事務所に連絡することが難しいということもあるでしょうが、少しの時間であっても弁護士の話を聞いて、視界をクリアにするということは皆さまにプラスになるかと思います。
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