※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
1. 事案の概要(相談前の状況)
状況: 性風俗店で知り合った女性にお金を貸すも音信不通
Aさんは、相手方であるBさんと性風俗店で知り合いました。
当初はたまに店舗を利用するだけでしたが、次第にBさんに対して好意を抱くようになり、店舗の外で個人的に会うようになりました。
Aさんは店舗の外で会う時にも、Bさんからの希望に応じて、毎回数万円を支払っておりました。
店の外で会うようになった後、Bさんから、お金に困っているという話を聞きました。内容としては、親族の借り入れの肩代わりをする必要がある、いわゆる闇金にお金を借りていて酷い取り立てにあっているといったものでした。
AさんはBさんの状況を不憫に思い、お金を貸すことを決意します。結局、Aさんは1年ほどの間に、合計で2000万円以上のお金を貸してしまいました。
AさんはBさんに貸し付けるお金を工面するため、自身の資産を取り崩し、最終的には借り入れをしておりました。そこまでAさんがBさんのために尽くしたのは、BさんがAさんと結婚をするという話をしていたことも背景にあったのです。
しかしながら、Aさんの資産がなくなり、借り入れもできなくなると、Bさんは態度を変え、さらに音信不通になってしまいました。
Aさんは貸したお金を返してもらうため、自ら動きますが、Bさんから一方的に少額の返済はあったものの、それ以降、また返済はなくなり途方に暮れていました。
自身で対応することにより強いストレスを感じていたAさんは、回収できるかどうかは分からないが、出来る限りのことをして次に進みたいと考え、弊所に相談に来られました。
2. 弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから、本件の証拠となる資料を多数保有しているとの話があったため、時系列で事実関係を説明いただきながら、対応する証拠を確認していくことになりました。
AさんはBさんに対して、1年ほどの間、かなりの回数、貸付をしておりました。その全てについて裏付けとなる証拠がある訳ではありませんでしたが、貸付金額が大きくなってきたタイミングで、貸付金額をまとめる形の借用書を作成しておりました。
また、お金の交付方法は振り込みのほか、現金手渡しも複数回ありましたが、お金を渡したタイミングでの証拠はないものの、貸付金額をまとめた借用書において、Bさんに現金を受け取った旨記載してもらっていたので、お金を渡した事実もほとんど裏付けを取ることができました。
以上、貸付については証拠上請求が可能であると判断しました。
ただ、懸念点もいくつかありました。
まずはBさんの資力についてです。Bさんは性風俗店で勤務しておりましたが、退店しており、精神的に不安定になっているという話もあったため、収入がなく、返済の十分な資力が無いことも予想できました。
また、AさんがBさんと店舗の外で会った際、性的関係を持ったこともあったようで、Bさんから不法原因給付であるとの反論(例えば、受け取ったお金は、愛人関係を維持するためのお金であって、返済の義務を負わないとの主張)が来ることも予想されました。
以上、事案の見通しをAさんに説明すると、回収できればベストの結果だが、出来る限りのことをしたうえで回収できなかったとしても、本件を終わらせることができるのであれば構わないとのご意向であったため、当職で対応をお受けすることになりました。
Bさんについては、電話番号も住所も把握できていたころから、まずは、当職から連絡し、貸付金の清算について話をしたいと申し入れました。
当初、Bさんからは無視をされ、早々に訴訟に移行するものと考えておりましたが、Bさんが当職からの申し入れに応じ、話し合いの機会を設けることができました。
話し合いにおいて、Bさんは借入額を認めたものの、支払能力が十分ではないため、月々少額しか弁済できないと回答してきました。
Bさんの回答を踏まえてAさんと協議をしたところ、連帯保証人を立ててもらう、合意書を公正証書にしてもらうといったアイデアが出てきましたが、協議をしているうちに、Bさんに代理人として弁護士が就きました。
代理人の弁護士からは、一度認めた借入金額を争うといった回答のほか、そもそも不法原因給付であるため返済義務は負わないという、予想通りの回答が来ました。
その後、Bさんの代理人と何度かやり取りをしたものの折り合えなかったことから、やむを得ず、訴訟を提起することになりました。
訴訟では、貸付の証拠がある程度揃っていたこともあり、当方の請求を認める判決が出ました。なお、Bさんから、不法原因給付であるとの反論も出されましたが、証拠上、貸付は性的関係と別に存在していることが明確に把握できたところから、当該反論は認められませんでした。
判決後、当職からBさんの代理人に連絡し、弁済をどのようにしていくのか確認をしました。しかしながら、代理人からは弁済の資力はないといった回答とともに、Bさんは自己破産をする意向であるとの連絡がありました。
Aさんの、出来る限りのことをしたいという思いから、Bさんの賃金に対する強制執行も申し立てましたが、残念ながら空振りに終わってしまい、回収はできませんでした。
結局、Bさんはその後、自己破産を申立て、当職は破産債権者であるAさんの代理人として、管財人と交渉を行いましたが、めぼしい資産が存在しないということで、最終的に免責が認められてしまいました。
本件は、Bさんから回収ができなかったという結果に終わりましたが、Aさんからは、出来る限りのことをしたので、これで先に進めるといったお話をいただき、終件となりました。
3. 解決結果と弁護士のコメント
回収額: 数十万円
風俗嬢に個人的にお金を貸したというご相談は、弊所でもかなりの数をいただいております。
性風俗店で知り合った後、店舗に通うようになって、個人的な悩みを聞くようになり、お金を貸してしまうという点は多くのケースで共通して見られるところです。
本件のように、店を通さずに会うようになるというケースもあり、そのようなケースでは、店舗で会うだけのケースに比べて、貸付金額が多額になるという傾向もあります。
相手方との距離が近くなればなるほど(近いと感じさせられるほど)、相手方の窮状を聞いて助けたくなるのはやむを得ないところかと思います。
本件でも、Bさんはありとあらゆる不幸に見舞われて(結局、Bさんが主張する事実は確認できなかったのですが)、生活もままならず、精神的に不安定になっているとAさんに説明しておりました。
Aさんの心情も理解できるところはありますが、相手方の資力を含め、信用が十分でないところでお金を貸すべきではありません。多額であれば当然のこと、少額であっても、返済を受けられなければ、嫌な思いをすることになります。
信用が十分でない相手方にお金を貸す時には、返ってこない可能性もあることを十分に頭に置いておく必要があるでしょう。
それでも本件のように、結婚を匂わせるなど、信用とは別の力によってお金を借りようとする相手方が居た場合には、判断を迷う時があるかもしれません。
そんな時は、返ってこない可能性があることを念頭に置きながらも、どうやったら回収できるかという点を検討し、回収のための仕組みを作るようにしてください。
男女間のお金の貸し借りでは、きちんとした書面を作らないで、口頭やLINEのメッセージだけ多額のお金を貸してしまうというケースが散見されます。
LINEのメッセージにおいて、あげたのではなく貸したことや、貸した金額が裏付けられるのであれば、最低限の証拠として用いることはできますが、やはり契約書や借用書など、きちんとした書面を作成するようにしてください。
また、貸付の前に、連帯保証人を立てることはできないかといった点を確認するほか、身元に関する情報や収支に関する情報を確認し、本当に回収できるのかどうかを精査するようにしてください。
返してくれると約束してくれた、結婚するので安心して欲しいと言われた、大きなお金が入ると言われた、など明確な根拠のないまま大事なお金を貸してしまっているケースが非常に多くあります。
貸したお金を回収することはハードルが高い類型の一つであり、それが多額であったり、相手方が不安定な仕事をしていたりする場合には、さらに難易度が上がることをご留意いただければと思います。
本件は、最終的に回収に結びつかなかったため、解決事例として紹介させていただくのに適当な事案では無いかもしれませんが、同種のご相談・ご依頼が多数あり、できれば未然に被害の発生を防止したいという考えから、紹介させていただくことにしました。
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