成年年齢引下げによって、自由にできることが増えると喜んでいる方も多いのではないでしょうか。大人になり自由になることは大変喜ばしいことですが、その一方で責任も増え、気を付けなければならないことがたくさんあります。 この記事ではそんな新成人の方に知っていただきたい契約とそのトラブルについて解説いたします。 何らかの被害に遭うことや、損をしないように今回の改正について確認しておきましょう。
成年成年年齢引下げについて
そもそもいつから変わるの?
民法の改正により、今まで20歳であった成年年齢が18歳に引き下げとなります。
この民法の一部を改正する法律は2022年4月1日に施行され、この時点で18歳、19歳になっている方は一斉に成年になります。現在17歳で4月以降に18歳となる方はその誕生日から成年となります。
なぜ引き下げるの?
日本では明治9年の太政官布告以来、変わることなく成年年齢を20歳と定めておりました。それではなぜ成年年齢の引き下げが行われたのでしょうか?
選挙権の引き下げに伴って
皆様もまだ記憶に新しいかと思いますが、2016年6月に公職選挙法等の改正が施行され、成年年齢と同様に選挙権が20歳から18歳に引き下げられました。これに倣い民法でも18歳から成年として扱うのが適当であるという意見のもと、今回の法改正に至ったようです。
若者の社会参加を促すため
また法務省では「18歳、19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものである」と説明しております。 “”法務省HP“”
世界の動向に倣って
さらに、世界各国でもイギリス、フランス、オランダ、スペイン、カナダ等大多数の国が成年年齢を18歳としており、その動きに倣っているところもあるようです。
何が変わるの?
それでは成年年齢の引き下げに伴い、何が変わっていくのかを解説いたします。
女性の婚姻年齢の変更
婚姻に関しても、今まで女性は16歳で男性は18歳で婚姻関係を結ぶことが可能でしたが、成年年齢げに伴って女性の婚姻年齢を18歳へと引き上げられております。
お酒やタバコは
飲酒や喫煙については、健康面への影響や非行防止、青少年保護等の観点から20歳のままとなっております。他にも公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)もギャンブル依存症への懸念から20歳のままになっております。
契約について
成年年齢の引き下げで一番注目したいのが、契約の締結です。民法では、未成年者が親権者の同意を得ないで行った契約の申し込みは、原則として取り消しができると規定されています。
(民法5条2項) 第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。 2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
この法律により、実質的には、未成年者は親権者の同意を得ずに契約ができないことになっておりました。しかし、今回の成年年齢引下げにより、18歳から成年となり親権に服することがなくなるため、自由に契約ができることとなりました。
トラブルに遭わないためにどうするべきか
18歳から自由に契約ができるようになり、今まで親権者の承諾を得ずにできなかったことが、自分の意思だけでできるようになりました。
18歳からできる契約の例
・携帯電話(スマホ)の契約
・不動産の賃貸契約
・クレジットカードの契約
こうして、成年になり大人として、自分の意思のみでできることが増え自由になる一方で、自由には責任が伴うものです。
ここから、未成年者として守られ、事なきを得た問題を事例とともに紹介し、今後成年人になる方への注意点を解説いたします。
事例1
18歳の未成年者Aは友人の勧めで初めて歌舞伎町のホストクラブに行きました。Aは未成年であることを理由にお酒を飲むことを断りましたが、その場の空気もありホストに勧められて、断ることができず飲酒してしまいます。酔っぱらってしまったこともあり、知らないうちにホストに高いボトルを入れられてしまい、100万円近くの代金を請求されてしまいました。その日は売掛として処理すると言われ、自宅と実家の住所、連絡先、学生証などを控えられ、持っていた数千円を払うのみで店を出ることに。後日、担当のホストから頻繁に督促の連絡来るようになってしまいます。Aの収入はアルバイトで月数万円であったため、支払いをすることもできず困り果てたAは、親権者である両親に事実を話し今後の対応を相談しました。
事例2
19歳の未成年者Bは、パパ活をしながら、毎晩のようにホストクラブに通っていて、気づいた時にはホストクラブの売掛は300万円近くになってしまいましいました。お金が足りずパパ活相手から、付き合ってくれたら200万円あげると言われ承諾し、またそのお金をすべてホストにつぎ込むようにまでなってしまった。
ある時、そのパパとの対応が嫌になり相手に別れを告げると、今まで渡した200万は貸したものだから全額を返済するようにと急に言われてします。知らないうちに実家の住所を調べられBの母に対して「娘さんに200万貸した。返さなければ詐欺で訴えるぞ!」といきなり家に押しかけられてしまいます。
事情を全く知らなかったBの母は、驚きBに事情を確認、そこでようやくBが、ホストの売掛300万円とパパ活相手からの200万円の請求を受けていることを把握することになりました。
どうやって解決したの?
上記事例は、細部は変更しているものの、実際に弊所への相談があった事例になります。両者とも未成年者ということで、ホストクラブの売掛に対しては、店と担当のホストに対し未成年であることを理由にその契約を取り消す旨の通知をし、支払いをせずに済んでおります。またBのパパ活の相手方に対しても、そもそも贈与であると認識しており、返済の義務はないが、消費貸借契約であっても既に遊行費として消費しており、未成年者取り消しをするということで、どちらの未成年者も債務を支払わずに済んでおります。
新成人が知っておくべきこと
このように未成年であるが故に、法律に守られ債務の弁済を免れることができましたが、もしこの事例のような未成年者が成年年齢の引き下げ後のことであればどちらの場合も支払わなければならない事になるかもしれません。
どうしても経験の乏しい若者はこういった被害に遭いやすく、またそういった若者に対し悪意をもって接近してくる悪徳な業者も多いため、契約をする際や金銭の貸し借りをする際には十分に気を付けなければなりません。
消費者トラブルに発展しやすい契約
上記のようなホストクラブでのトラブル以外にも消費者トラブルの種は複数存在します。どのような契約でトラブルが多いかを頭に入れて、本当に必要な契約なのか、相手の言っていることが本当なのかなど、十分に注意して契約を結んでください
トラブルの多い契約の例
- マルチ商法の勧誘
- 悪質な事業者による高額商品の販売
- 絶対もうかるというような副業、投資話への誘い
- 男女の恋愛を利用した金銭トラブル
- SNSからくる様々な勧誘
既に契約してしまっている方は
今現在未成年である方でも、ご紹介した事例のように既に何らかのトラブルを抱えていらっしゃる方もいるかもしれません。また、今は気付いていないかもしれませんが、これからトラブルに発展する可能性のある契約を行ってしまっているかもしれません。
親権者の同意を得ずにした契約は取り消しうる行為ですが、追認することにより有効になり、取り消しすることができなくなってしまいます。
追認とは、親権者や成年に達した本人がその法律行為(契約)を認めた場合や、成年に達してから代金の一部を支払った場合は追認したとみなされ取り消しすることができなくなります。
(民法第125条) 第百二十五条 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。 一 全部又は一部の履行 二 履行の請求 三 更改 四 担保の供与 五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 六 強制執行
ホストクラブの事例で説明すると、成年に達した後に、未成年の時からある売掛金の返済を行うことで、取り消しすることができたはずの金額が支払わなくてはいけなくなってしまうのです。
これから一斉に成年となると、未成年時にした契約について追認を求められるようになるかもしれません。また、気づかずに追認してしまう可能性も十分出てきます。契約の確認を求められるような事や、継続的に支払いをしているような事があれば、慎重にその対応をご検討ください。
まとめ
今年の4月から成年になる方、また今年誕生日を迎えることで成年になる方は、契約に対してトラブルに遭わないように最大限に注意してください。また、取り消しできる例も多くあるので、成年達した際に追認とならないよう、何かしらの契約をしていて、トラブルになってしまうのではと懸念されている方は一度弁護士にご相談することをお勧めします。
弊所では、ホストクラブでのトラブルをはじめ、数多くのご相談をいただいております。お困りのことがありましたら、ご気軽にご相談ください。
最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。