事業者向けに物件を賃貸すると、居住用とは異なるさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
また事業用物件の場合には、明け渡しの際の原状回復を巡るトラブルも起こりやすくなっています。
今回は、事業用物件を賃貸する際の注意点を解説します。
1.本来の目的と異なる利用をされるトラブル
事業用物件を賃貸するときには、通常「物件の利用目的」を確認するものです。
たとえば飲食店の店舗として利用するのか美容室経営するのか、事務所として利用するのかなどを取り決めます。
ところが引き渡し後時間が経つと、当初の目的とは異なる形態で利用されていることが発覚してトラブルになる例があります。
このような問題を防止するには、当初に作成する契約書内できちんと契約目的を明らかにし、「別目的で利用する際には書面によって事前に大家の承諾を得る必要がある」と明記しておきましょう。違反した場合には契約を解除できる旨も盛り込んでおくべきです。
2.転貸される、他の会社や人と共同利用されるトラブル
事業用として物件を賃貸していると、いつの間にか賃借人とは異なる別業者が出入りするようになっていたり、別の会社が物件を利用するようになったりするケースがあります。
このような場合、賃借人が無断で物件を「転貸」している可能性があります。
無断転貸は賃貸人への重大な背信行為なので、賃貸人は賃貸借契約を解除することが可能です。
3.近隣トラブル
事業用物件では、居住用の物件以上に近隣トラブルが発生しやすいです。騒音やにおいが発生するケースもありますし、看板やネオンなどが迷惑がられるケースもあります。
事業者を入れる場合には、土地柄なども考慮して、周辺住民とトラブルになりにくそうな業種を選定しましょう。
4.原状回復の範囲や費用負担でもめる
事業用物件では、契約終了時の原状回復でもめるケースが非常に多くなっています。事業を行うために物件内を大きく改造して、原状回復にお金がかかるからです。
また賃借人がたくさんの増作物を持ち込んでおり、その撤去に費用と労力がかかるケースも多々あります。
賃借人が原状回復せずに逃げてしまったら、大家が原状回復費用を負担しなければなりません。賃借人の持ち込んだ造作物を物件内に放置されると明け渡し訴訟が必要になる可能性もあります。
そのようなことを防止するため、契約当初の段階で原状回復のルールについてしっかり取り決めておきましょう。
原状回復義務の範囲を明確にし、万一賃借人が原状回復に応じない場合には賃貸人が原状回復を行って賃借人に費用請求できることを定めておきましょう。
リスクを抑えて事業者へ物件を賃貸するためには法的知識が必須です。ぜひとも顧問弁護士を活用してみてください。