- 不倫を疑われて慰謝料を請求されたが、証拠を見せられていない
- 肉体関係なしなのに、高額な慰謝料を請求されている
- 問い詰められて認めてしまい、撤回できるか悩んでいる
こんな悩みにお答えします。
不倫の慰謝料は、不貞行為を請求する側が証明できなければ認められません。請求されたからといって、支払い義務があるとは限りません。
一方で、「証拠がないなら大丈夫」とも言い切れません。直接の証拠がなくても、間接的な事実の積み重ねから不貞が認定されることがあるからです。
本記事でわかることは、以下のとおりです。
- 証拠がなくても請求される理由
- 立証責任の所在と必要な証明の程度
- 証拠として評価されるもの・されないもの
- 否認・留保・示談の判断基準
最後まで読むことで、否認すべきか認めるべきかがわかります。ぜひ最後までご覧ください。
証拠がないのに慰謝料を請求されるのはなぜか

証拠を示されないまま請求される背景には、次の事情があります。
- 請求自体は証拠がなくてもできる
- 相手が「証拠がある」と言っているだけのケース
- あなたの自白を引き出すことが目的の場合がある
請求自体は証拠がなくてもできる
慰謝料の請求は、相手が一方的に行える行為です。内容証明を送るのに証拠は必要ありません。
つまり、請求が届いたこと自体は、相手が不貞を証明できることを意味しません。請求書の記載は相手の主張にすぎず、確定した事実ではありません。
相手が「証拠がある」と言っているだけのケース
「証拠は揃っている」と告げられても、実際には不貞の証明に足りる資料を持っていないケースは少なくありません。
十分な証拠があるなら、示したほうが交渉は早く進むはずです。内容を明かさず支払いだけを迫る場合は、証拠が弱い可能性を疑ってみてください。
あなたの自白を引き出すことが目的の場合がある
証拠が乏しい相手にとって、最も有力な証拠になり得るのはあなた自身の発言です。「正直に言って」と迫るのは、認める言葉を引き出すためのことがあります。
会話は録音されている可能性があります。問い詰められても、その場で認めることは避けてください。
不貞行為の立証責任は誰にあるのか

対応を考えるうえで、まず理解しておくべきなのが立証責任の考え方です。
- 立証責任は請求する側が負う
- どの程度の証明が必要とされるか
- 間接的な事実の積み重ねで認定される仕組み
立証責任は請求する側が負う
不貞の慰謝料は不法行為に基づく損害賠償(民法709条)であり、不貞行為の存在は請求する側が証明しなければなりません。
あなたの側で「不貞をしていない」ことを証明する必要はありません。裁判で相手が証明できなければ、請求は認められないのが原則です。
どの程度の証明が必要とされるか
民事裁判で事実が認定されるには、「通常人が疑いを差し挟まない程度」の証明(高度の蓋然性)が必要とされ、「怪しい」という程度では足りません。
ただし、現場を直接撮影した証拠が必要というわけではありません。後述する間接事実の積み重ねで認定されることは珍しくないため、「決定的な証拠がないから安心」とは言い切れません。
間接的な事実の積み重ねで認定される仕組み
肉体関係を直接示す証拠はまれです。そのため裁判では、ホテルへの出入り、宿泊を伴う旅行、親密なやり取りといった間接的な事実を組み合わせ、「肉体関係があったと推認できるか」という形で判断されます。
ひとつひとつは弱い証拠でも、複数の事実が矛盾なく重なれば不貞が認定される可能性があります。相手が持っている資料がどの程度積み上がっているかが、対応方針を決める鍵になります。
証拠として評価されるもの・されないもの

不貞の証拠はどこまで揃えば認定されるのか、相手が持ち得る資料の裁判での重みを整理しておきましょう。
- ホテルへの出入りが分かる写真・動画
- 性的関係をうかがわせるやり取りの記録
- 探偵の調査報告書
- 証拠として弱いとされるもの
ホテルへの出入りが分かる写真・動画
ラブホテルに2人で入り、一定時間後に出てくる様子の写真や動画は、不貞行為を推認させる有力な証拠と評価されます。
一方、シティホテルへの出入りはそれだけでは推認力が弱く、同室宿泊を示す予約記録などと組み合わさって初めて重みを持つ傾向があります。
性的関係をうかがわせるやり取りの記録
LINEなどに性的な関係を前提とした会話が残っていれば、それ自体が有力な証拠になり得ます。宿泊などへの具体的な言及があるものは重視されやすい傾向があります。
逆に、「好き」「会いたい」といった好意を示すだけのやり取りは、親密さは示せても肉体関係の証明には直結しないことが多いといえます。
探偵の調査報告書
探偵の調査報告書は客観的な記録として裁判でも証拠になります。ただし、報告書があるだけで不貞が認定されるわけではなく、内容次第です。
ホテルへの出入りや宿泊が記録されていれば推認力は高まりますが、食事や送迎の記録にとどまる場合、それだけで認定するのは難しいといえます。
証拠として弱いとされるもの
証拠がどこまであれば足りるかを考えるうえで、2人で食事をした写真、車への同乗、頻繁な連絡の履歴などは、単独では不貞の証明として弱いと評価されるのが一般的です。
第三者の伝聞や相手の一方的な確信も、裏付けがなければ証拠価値は限られます。ただし、他の事実と組み合わさると意味を持つ場合があるため軽視はできません。
証拠がない請求に対して取りうる3つの対応

対応は大きく3つに分かれます。
- 事実を否認して争う
- 認否を留保して相手の主張を確認する
- 早期に示談して解決する
- どの対応を選ぶかの判断基準
事実を否認して争う
不貞の事実がない、または相手が証明できる見込みが低い場合は、否認して争う選択があります。証明が不十分であれば、訴訟になっても請求は認められません。
ただし、後から「実は関係があった」と認める展開になると、一貫性のなさが不利に働きます。否認は、事実関係と相手の証拠を見極めたうえで選ぶべき対応です。
認否を留保して相手の主張を確認する
認否をすぐに決めず、「事実関係を確認のうえ回答する」として相手の主張の根拠を確認する対応です。回答期限が迫っていても、この形なら不利になりにくいでしょう。
相手に証拠開示の義務はありませんが、どのような事実を根拠に請求しているのかを尋ねること自体は可能です。相手の回答から、証拠の強さをある程度推し量れます。
早期に示談して解決する
相手が有力な証拠を持っている可能性が高い場合や、配偶者への発覚を避けたい場合は、早期に示談する選択も現実的です。
この場合も請求額をそのまま受け入れる必要はなく、証拠の弱さを踏まえて減額を交渉したうえで合意するのが一般的です。
どの対応を選ぶかの判断基準
判断の軸は「不貞行為があったか」と「相手が証明できそうか」の2点です。事実がなく証明も難しいなら否認、事実があり証拠も強そうなら示談、判断がつかないなら留保が基本的な整理です。
ただし、証拠の強さの評価は専門的な判断を要するため、決める前に弁護士に相談することをおすすめします。
一度認めてしまった後でも撤回できるか

撤回の可否は、認めた形によって変わります。
- いったん認めた事実は覆しにくい
- 録音やメッセージが残っている場合
- 誓約書や念書を書いてしまった場合
いったん認めた事実は覆しにくい
裁判外で口頭で認めた発言は、法律上直ちにあなたを拘束せず、後から否認すること自体は可能です。
しかし、一度認めた事実を後から覆すと、その後の主張全体の信用性が疑われやすくなります。「なだめるために言った」という説明が通るかは事案により、撤回は認められにくいのが実情です。
録音やメッセージが残っている場合
認めた発言の録音や、謝罪や関係を認めるLINEが残っている場合、それらは相手の有力な証拠になります。
ただし、「不貞行為を認めた」と評価できるかは文言や文脈によります。曖昧な表現なら反論の余地が残ることもあるため、何をどう認めたのかを正確に整理しておきましょう。
誓約書や念書を書いてしまった場合
不貞を認めて支払いを約束する誓約書や念書に署名した場合、原則としてその内容に拘束されます。
脅されて書かされた(民法96条)、誤信して書いた(民法95条)といった事情があれば取消しを主張できる可能性はありますが、認められにくいのが実情です。示談書にサインしてしまった場合の対応を解説した記事もご参照ください。
証拠がない状態で訴訟になった場合

訴訟になった場合の流れを確認しておきましょう。
- 相手が証拠を出せなければ請求は認められない
- 推認によって認定されるケース
- 争った末に敗訴した場合の負担
相手が証拠を出せなければ請求は認められない
訴訟では、相手が不貞行為を証明する証拠を提出しなければならず、証明できなければ請求は棄却されます。
ただし、訴状が届いたら必ず答弁書を提出してください。放置して欠席すると、証拠の有無にかかわらず相手の主張を認めたものと扱われるおそれがあります。
推認によって認定されるケース
前述のとおり、直接の証拠がなくても、間接的な事実の積み重ねによって不貞が認定されることがあります。
深夜まで2人で過ごした記録と親密なやり取りが重なり、あなたの説明に不自然な点があれば、「肉体関係があったと推認するのが合理的」と判断される可能性があります。否認するなら、各事実に合理的な説明ができるかが問われます。
争った末に敗訴した場合の負担
争った末に敗訴すると、慰謝料に加えて遅延損害金や訴訟費用の一部を負担することになります。
争うかどうかは、勝てる見込みだけでなく敗訴時の負担も踏まえて決める必要があります。
証拠がないのに慰謝料を請求された場合のよくある質問

当事務所によく寄せられる質問にお答えします。
「証拠がある」と言われましたが、開示を求められますか?
交渉段階では、相手に証拠を開示する義務はありません。ただし、根拠を尋ねること自体は可能で、相手の反応が証拠の強さを推し量る材料になります。訴訟になれば相手は証拠を提出せざるを得ず、そこで初めて内容が明らかになることもあります。
LINEの履歴を削除しても問題ありませんか?
削除しても、相手側の端末に記録が残っていれば意味はありません。むしろ、請求後の削除が判明すると、不利な事実を隠したと受け取られて疑いを強める可能性があります。安易に削除せず、弁護士に見せたうえで対応を決めてください。
会話を録音されていた場合はどうなりますか?
無断で録音された会話でも、民事裁判では原則として証拠になります。関係を認める発言をしていれば、有力な証拠になり得ます。ただし前述のとおり、不貞行為そのものを認めたと評価できるかは文脈によるため、発言内容を正確に整理しておきましょう。
否認したら訴えられてしまいますか?
可能性はありますが、証拠が弱ければ相手も敗訴のリスクや費用を負うため、必ず訴えてくるとは限りません。一方で、証拠が強いのに否認を続けると和解の機会を失うおそれがあるため、否認の判断は弁護士と相談のうえで行ってください。
証拠がないのに慰謝料を請求されてお困りなら弁護士へご相談を

今回は、証拠がないのに不倫の慰謝料を請求された場合の対応について解説しました。不貞行為の立証責任は請求する側にあり、証明できなければ請求は認められません。一方で、間接的な事実の積み重ねで認定されることもあるため、否認・留保・示談のどれを選ぶかは、相手の証拠の強さを見極めたうえで決める必要があります。
とはいえ、相手がどの程度の証拠を持っているのかをおひとりで判断するのは難しいものです。
若井綜合法律事務所では、証拠を示されないまま慰謝料を請求された方からのご相談を初回無料でお受けしております。24時間365日受付、LINEでのご相談にも対応しており、全国どこからでもご相談いただけます。ご相談内容は秘密厳守いたしますので、配偶者や職場に知られたくないという場合もご安心ください。
問い詰められて認めてしまう前に、まずはお早めにご相談ください。
