• 交際相手から「独身だと偽った」として慰謝料を請求された
  • 既婚であることを伝えていなかった交際が終わり、内容証明が届いた
  • 結婚をほのめかしたつもりはないのに、結婚詐欺だと責められている

こんな悩みにお答えします。

貞操権侵害を理由に慰謝料を請求されたとしても、請求されたからといって支払義務があるとは限りません。貞操権侵害の成立には複数の要件が必要であり、既婚者との交際があったというだけでは認められないのが実情です。

一方で、対応を誤ると不要な金額を支払ったり、配偶者や勤務先に事情が伝わったりするおそれがあります。請求を受けた直後の行動が、結果を大きく左右します。

本記事では、貞操権侵害で慰謝料を請求された方に向けて、成立要件から反論の方法、相場、周囲に知られずに解決する方法までを解説します。

本記事でわかることは、以下のとおりです。

  • 貞操権侵害が認められるための4つの要件
  • 請求された側として主張できる反論
  • 貞操権侵害の慰謝料相場と金額を左右する事情
  • 請求を受けた直後にやってはいけないこと
  • 家族や職場に知られずに解決する方法

最後まで読むことで、ご自身に支払義務があるのか、どう対応すべきかがわかります。ぜひ最後までご覧ください。

貞操権侵害を理由に慰謝料を請求されるのはどのような場合か

貞操権侵害を理由に慰謝料を請求されるのはどのような場合かを解説するイメージ写真

まず、貞操権侵害とはどのような主張なのかを整理します。

  • 貞操権侵害として主張される典型的な状況
  • 不貞慰謝料との違い
  • 請求されたからといって支払義務が確定するわけではない

貞操権侵害として主張される典型的な状況

貞操権侵害とは、相手を欺いて性的関係を持ち、相手の性的自由を侵害したとして、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を求める主張です。

典型的なのは、「独身と偽った」「近いうちに離婚すると言われた」「結婚する約束をしていた」といった理由で、既婚者側が交際相手から慰謝料を請求されるケースです。

不貞慰謝料との違い

不貞慰謝料は、既婚者の配偶者が、不倫によって婚姻関係を壊されたとして請求するものです。これに対し貞操権侵害の慰謝料は、交際相手本人が、欺かれて関係を持ったことを理由に請求します。

請求する人も、守られる利益も異なるため、不貞慰謝料の相場や考え方をそのまま当てはめることはできません。

請求されたからといって支払義務が確定するわけではない

内容証明に金額と期限が書かれていても、それは相手の主張にすぎません。実際に支払義務が生じるかどうかは、後述する要件を満たすかどうかで決まります。

まずは相手の主張がどの事実に基づいているのかを確認してみてください。

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貞操権侵害が認められるための要件

貞操権侵害が認められるための要件を解説する図解

貞操権侵害の成立には、おおむね以下の4つの要件が必要と考えられています。

  • 相手を欺く行為があったといえるか
  • 相手が誤信していたといえるか
  • 性的関係と誤信との因果関係があるか
  • 社会通念上許されない程度に達しているか

相手を欺く行為があったといえるか

第一に、独身と告げる、結婚する意思があるように装うなど、相手を欺く行為があったかが問われます。

既婚であることを積極的に隠したり、離婚協議中であると事実に反する説明をしたりした場合は、欺く行為と評価されやすくなります。一方で、既婚かどうかを聞かれず、単に話題にしなかっただけでは、直ちに欺く行為があったとは評価されにくい傾向があります。

相手が誤信していたといえるか

第二に、相手が実際に「独身である」「結婚できる」と誤信していたことが必要です。

たとえば、相手が既婚であることを知りながら交際を続けていた場合や、途中で既婚と知った後も関係を継続していた場合、少なくともその時点以降については誤信があったとはいえません。

相手がいつ既婚を知ったのかは、成否を分ける重要なポイントです。

性的関係と誤信との因果関係があるか

第三に、誤信していたからこそ性的関係を持ったという因果関係が必要です。

独身と信じていなければ関係を持たなかったといえる場合には因果関係が認められやすくなります。反対に、相手が結婚の有無に関心を持たずに交際していたと見られる事情があれば、因果関係は否定されやすくなります。

社会通念上許されない程度に達しているか

第四に、欺く行為の態様や交際の経緯を総合して、社会通念上許されない程度に達しているかが判断されます。

交際期間や年齢差、結婚をどの程度具体的に約束していたか、関係を持つに至った経緯などが考慮されます。既婚者との交際すべてが貞操権侵害となるわけではありません。

請求された側として主張できる反論

請求された側として主張できる反論を解説する図解

要件を踏まえると、請求された側には主に以下の反論が考えられます。

  • 既婚であることを隠していなかった
  • 相手も既婚であることを知りえた
  • 結婚をほのめかした事実がない
  • 関係が短期間で、対等なものであった

既婚であることを隠していなかった

交際の早い段階で既婚であることを伝えていたのであれば、欺く行為も誤信もなかったことになります。この場合、貞操権侵害は成立しにくいと考えられます。

独身と偽ったと主張されている場合、既婚であることを伝えたメッセージのやり取りや、相手がそれを前提とした発言をしている記録が重要な証拠となります。トーク履歴は削除せず保管しておいてください。

相手も既婚であることを知りえた

明示的に伝えていなかった場合でも、指輪をしていた、家族の話をしていた、休日に会えなかったなど、既婚であると容易に気付ける事情があれば、誤信の有無が争点となります。

相手が既婚を疑いながら交際を続けていたと評価される場合、慰謝料が否定されたり、減額されたりする可能性があります。

結婚をほのめかした事実がない

「結婚詐欺だ」と主張される場合でも、実際に結婚を約束したり、結婚を前提とした発言をしたりしていなければ、その主張は成り立ちにくくなります。

結婚の話題を出したのが相手側であった、こちらは明確に応じていなかったといった事情があれば、やり取りの記録から示せるようにしておきましょう。

関係が短期間で、対等なものであった

交際期間が短く、双方が対等な立場で合意のうえ関係を持っていた場合、社会通念上許されない程度に達しているとは評価されにくくなります。

年齢や社会的地位に大きな差がなく、相手が自らの意思で交際を続けていたといえる事情は、反論の材料となります。

貞操権侵害で認められる慰謝料の水準

貞操権侵害で認められる慰謝料の水準を解説するイメージ写真

貞操権侵害の慰謝料相場を知っておくことは、請求額が妥当かを判断するうえで欠かせません。

  • 不貞慰謝料より低額になりやすい
  • 金額を左右する事情
  • 相場を大きく超える請求を受けている場合の考え方

不貞慰謝料より低額になりやすい

貞操権侵害の慰謝料相場は、数十万円〜200万円程度とされることが多く、婚姻関係の破綻を理由とする不貞慰謝料と比べると低額にとどまる傾向があります。

これは、貞操権侵害では婚姻という法的な関係が壊されたわけではなく、性的自由の侵害という精神的苦痛が中心となるためです。

金額を左右する事情

慰謝料額を左右する主な事情は、以下のとおりです。

  • 交際期間の長さと欺いていた期間
  • 結婚の約束がどの程度具体的であったか
  • 妊娠や中絶の有無
  • 相手が受けた精神的・経済的な不利益の程度
  • 年齢差や社会的地位の差

特に、妊娠や中絶を伴う事案や、結婚を信じて退職や転居をしていた事案では、高額になる可能性があります。

相場を大きく超える請求を受けている場合の考え方

内容証明に相場を大きく超える金額が記載されていることは珍しくありません。請求額は相手が自由に設定できるものであり、その金額がそのまま認められるわけではないためです。

請求額の大きさに動揺して応じるのではなく、ご自身の事情に照らして妥当な水準はどの程度かを見極めることが大切です。

請求を受けた直後にやってはいけないこと

請求を受けた直後にやってはいけないことを解説する図解

請求を受けた直後は、焦りから不利な行動を取りがちです。以下の3点には特に注意してください。

  • 謝罪文や念書を書いてしまう
  • 解決金として一部を支払う
  • 連絡を絶って放置する

謝罪文や念書を書いてしまう

相手に求められるまま、「独身と偽って申し訳ない」といった謝罪文や、「〇万円を支払う」という念書を書いてしまうと、後から撤回することは困難です。

相手の主張する事実を認めた証拠として使われ、本来争えたはずの要件を自ら認めてしまう結果になりかねません。その場を収めるために文書を作成することは避けてください。

解決金として一部を支払う

「とりあえず一部だけ払えば収まるだろう」と考えて支払うことも危険です。一部の支払いは、支払義務を認めたと評価されるおそれがあります。

支払うかどうかは、要件や相場を確認したうえで判断するようにしましょう。

連絡を絶って放置する

反対に、連絡を絶って放置することもおすすめできません。相手が弁護士を通じて請求している場合、無視を続けると訴訟に移行する可能性があります。

また、直接連絡が取れないことで、相手が配偶者や勤務先に接触してくるリスクも高まります。届いた書面は捨てずに保管しておいてください。

家族や職場に知られずに解決できるか

家族や職場に知られずに解決できるかを解説するイメージ写真

請求された方の多くが最も気にされるのが、配偶者や勤務先に知られないかという点です。適切に対応すれば、周囲に知られずに解決できる可能性は十分にあります。

  • 直接交渉が続くほど周囲に伝わるリスクが高まる
  • 代理人を立てて連絡窓口を一本化する
  • 示談書に口外禁止条項を入れる

直接交渉が続くほど周囲に伝わるリスクが高まる

当事者同士で直接やり取りを続けると、感情的な対立が深まり、相手が「配偶者に言う」「職場に連絡する」と迫ってくることがあります。

動揺して不用意な発言をしてしまうリスクもあり、直接交渉が長引くほど周囲に伝わる可能性は高まります。

代理人を立てて連絡窓口を一本化する

弁護士に依頼すると、以後の連絡はすべて弁護士が窓口となり、相手からご本人への直接連絡を止めるよう求めることができます。

自宅への書面送付や勤務先への連絡を避けるよう相手に伝えられるため、周囲に知られるリスクを大きく下げることが可能です。

示談書に口外禁止条項を入れる

示談で解決する場合は、示談書に口外禁止条項を入れておくことが重要です。相手が第三者に事情を話した場合の違約金を定めておくことで、解決後に配偶者や勤務先へ伝わることを抑止できます。

あわせて、清算条項も盛り込み、蒸し返しを防いでおきましょう。

貞操権侵害の慰謝料請求に関するよくある質問

貞操権侵害の慰謝料請求に関するよくある質問を解説するイメージ写真

よくいただく質問にお答えします。

結婚するとは一度も言っていませんが、それでも請求されますか?

請求されること自体は防げませんが、前述のとおり、貞操権侵害には相手を欺く行為が必要です。

結婚を約束しておらず、独身と偽ってもいないのであれば、要件を欠く可能性が高いといえます。ただし、既婚を積極的に隠していた場合は別の評価となることもあります。

相手も既婚者だった場合はどうなりますか?

相手も既婚者であった場合、相手自身も婚姻関係にありながら交際していたことになります。

こうした事情は、社会通念上の評価や慰謝料の減額事情として考慮される可能性があります。もっとも、直ちに請求が否定されるとまではいえません。

交際期間が短くても請求は認められますか?

交際期間の短さは、慰謝料を否定または減額する方向に働く事情の一つです。

ただし、期間が短くても、妊娠や中絶があった場合や、結婚を具体的に約束していた場合には、認められる可能性があります。

請求を無視するとどうなりますか?

前述のとおり、無視を続けると訴訟を提起される可能性があります。貞操権侵害で訴えられた場合、答弁書を出さず放置すると、相手の主張どおりの判決が出るおそれがあります。

訴訟に至れば裁判所から自宅に書類が届くため、周囲に知られるリスクも高まります。

貞操権侵害で慰謝料を請求されたら弁護士へご相談を

貞操権侵害で慰謝料を請求されたら弁護士へご相談を解説するイメージ写真

今回は、貞操権侵害で慰謝料を請求された場合の対応について解説しました。貞操権侵害が成立するには、欺く行為・誤信・因果関係・社会通念上の評価という要件を満たす必要があり、請求されたからといって支払義務が確定するわけではありません。

慰謝料の相場は数十万円〜200万円程度とされることが多く、相場を大きく超える請求には冷静な見極めが必要です。

とはいえ、要件を満たしているか、いくらが妥当かをおひとりで判断するのは難しいものです。

若井綜合法律事務所では、貞操権侵害で慰謝料を請求された方からのご相談を初回無料でお受けしております。24時間365日受付、LINEでのご相談にも対応しており、全国どこからでもご相談いただけます。ご相談内容は秘密厳守いたしますので、配偶者や勤務先に知られたくないという場合もご安心ください。

請求を受けた直後の対応が、その後の結果を大きく左右します。お早めにご相談ください。