• その場の勢いで示談書にサインしてしまった
  • 冷静になってから、金額が高すぎることに気づいた
  • 脅されて署名させられたので、取り消せるのか知りたい

こんな悩みにお答えします。

いったん署名した示談書は、原則として有効な合意となります。しかし、署名に至った経緯や内容によっては、取消しや無効を主張できる余地が残されている場合があります。

大切なのは、あきらめて言われるまま支払い続ける前に、ご自身のケースで何を主張できるのかを見極めることです。

本記事でわかることは、以下のとおりです。

  • 示談書の取消しや無効を主張できる可能性があるケース
  • 示談書に記載されがちな条項と注意点
  • 一部を支払ってしまった場合の影響
  • サインしてしまった後に今すぐやるべきこと

最後まで読むことで、いま取れる選択肢と、これ以上不利にならないための行動がわかります。ぜひ最後までご覧ください。

示談書にサインしても必ず有効になるとは限らない

示談書にサインしても必ず有効になるとは限らないを解説するイメージ写真

示談書や誓約書は、当事者間の合意を書面にしたものです。署名・押印した以上、原則としてその内容に拘束され、「やっぱりやめた」と一方的に撤回することはできません。

もっとも、署名したという事実だけで、書面の内容がすべて有効になるわけではありません。脅されて署名させられた場合や、重要な事実について騙されていた場合など、合意に至る過程に問題があるときは、民法の規定に基づいて取消しを主張できる可能性があります。また、内容があまりに一方的な場合、条項の一部が無効と判断される余地もあります。

まずは、取消しや無効を主張できるケースにあたらないかの確認から始めましょう。

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示談書の取消しを主張できる可能性があるケース

示談書の取消しを主張できる可能性があるケースを解説する図解

民法上、次のような事情がある場合には、示談の取消しや無効を主張できる可能性があります。

  • 強迫による署名だった場合
  • 重要な事実について誤解があった場合
  • 虚偽の説明を受けて署名した場合
  • 金額が著しく高額で公序良俗に反する場合

強迫による署名だった場合

「サインしなければ職場にバラす」「帰さない」などと畏怖させられて署名した場合、強迫による意思表示として取り消せる可能性があります(民法96条1項)。長時間拘束されて署名を迫られた、大声で怒鳴られ続けたといった状況も、強迫の評価につながりえます。署名の場でどのようなやり取りがあったかが、判断の重要なポイントになります。

重要な事実について誤解があった場合

合意の前提となる重要な事実について誤解(錯誤)があった場合、取消しを主張できる可能性があります(民法95条)。たとえば、法律上の支払い義務がないのに「不倫をした以上、必ず支払わなければならない」と誤信して署名したケースなどが考えられます。ただし、単に「相場を知らなかった」というだけでは認められにくいのが実情です。

虚偽の説明を受けて署名した場合

相手方から虚偽の説明を受け、騙されて署名した場合は、詐欺による取消しを主張できる可能性があります(民法96条1項)。「裁判になれば必ずこの金額になる」などと事実と異なる説明をされて署名した場合が典型です。

金額が著しく高額で公序良俗に反する場合

示談金の額が、事案の内容に照らして著しく高額である場合、公序良俗違反(民法90条)として、合意の全部または一部が無効と判断される余地があります。もっとも、相場より高いというだけで直ちに無効となるわけではなく、個別の事情を踏まえた判断が必要です。

示談書に記載されがちな条項と注意点

示談書に記載されがちな条項と注意点を解説する図解

取消しを主張できるかの検討とあわせて、署名した示談書にどのような条項が入っているかを確認してください。特に注意すべきは次の3つです。

  • 清算条項の意味
  • 違約金・遅延損害金の定め
  • 接触禁止条項

清算条項の意味

「本示談書に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」という条項を清算条項といいます。この条項のある示談が有効に成立していると、記載の金額を支払う代わりに、相手方からの追加請求も封じられます。ご自身の書面にこの条項があるかどうかで、今後の見通しが変わります。

違約金・遅延損害金の定め

支払いが遅れた場合の違約金や遅延損害金の条項にも注意が必要です。「一度でも支払いを怠ったときは残額を一括で支払う」(期限の利益喪失条項)とセットで定められていることが多く、自己判断で支払いを止めると、残額の一括請求を受けるおそれがあります。支払いを見直したい場合でも、止める前に対応を検討することが重要です。

接触禁止条項

不倫の示談書では、「今後一切接触しない」「連絡を取った場合は違約金を支払う」といった接触禁止条項が定められることが一般的です。違約金額が高額に設定されているケースもあるため、条項の内容を正確に把握し、うっかり違反することのないよう注意してください。

一部を支払ってしまった場合の影響

一部を支払ってしまった場合の影響を解説するイメージ写真

すでに一部を支払っている場合の影響も確認しておきましょう。

  • 債務承認として扱われる可能性がある
  • 消滅時効の主張が難しくなる
  • 支払い済みの金銭を取り戻せるか

債務承認として扱われる可能性がある

一部を支払った事実は、支払い義務があることを認めた行為(債務の承認)と評価される可能性があります。後から「そもそも支払い義務はなかった」と争おうとしても、一部支払いの事実が不利な事情として働きかねません。追加の支払いの前に、いったん立ち止まることが重要です。

消滅時効の主張が難しくなる

債務の承認があると、消滅時効の完成が妨げられ、進行中の時効期間はリセットされます(民法152条1項)。古い不倫について請求され、本来は時効を主張できたはずのケースでも、一部支払いによってその主張が難しくなることがあります。詳しくは、不倫慰謝料の時効について解説した記事をご覧ください。

支払い済みの金銭を取り戻せるか

示談の取消しや無効が認められた場合、法律上の原因を欠く支払いとして、既払い金の返還を求める余地が生じます。もっとも、任意の返還に応じてもらえないことも多く、実際に取り戻すには交渉や訴訟が必要になる場合があります。

示談書にサインしてしまった後にやるべきこと

示談書にサインしてしまった後にやるべきことを解説する図解

署名してしまった後でも、その後の対応しだいで状況は変わります。今すぐ、次の4つを実行してください。

  • 示談書の写しを必ず保管する
  • 署名に至った経緯を記録しておく
  • 追加の支払いに応じる前に相談する
  • 相手方との直接のやり取りを止める

示談書の写しを必ず保管する

署名した示談書の原本または写しは、必ず手元に保管してください。手元にない場合は、署名前後に撮影した写真や、条項について相手方とやり取りしたメッセージなど、内容を推知できる資料を集めておきましょう。

署名に至った経緯を記録しておく

いつ・どこで・誰の前で署名し、署名前にどのような発言や要求があったかを、記憶が新しいうちに時系列でメモに残してください。強迫や詐欺による取消しを主張できるかは、署名に至る経緯の立証にかかっています。当時のLINEのやり取りや録音があれば、あわせて保存しておきましょう。

追加の支払いに応じる前に相談する

前述のとおり、支払いを重ねるほど債務承認の問題が生じ、争える余地は狭まっていきます。一方で、自己判断で支払いを止めると、期限の利益喪失条項により残額の一括請求を受けるリスクもあります。次の支払期日が来る前に、専門家に相談して方針を決めることをおすすめします。

相手方との直接のやり取りを止める

署名後も相手方と直接やり取りを続けると、不用意な発言が不利な証拠になったり、追加の要求を受けたりするおそれがあります。連絡が来ても新たな約束はせず、対応は書面や代理人を通じて行ってください。

示談書・誓約書に関するよくある質問

示談書・誓約書に関するよくある質問を解説するイメージ写真

最後に、示談書・誓約書について、当事務所に多く寄せられるご質問にお答えします。

サインした示談書の控えをもらっていません

控えを渡さないこと自体で示談が無効になるわけではありませんが、内容を確認できない状態は不利です。相手方に写しの交付を求められるほか、弁護士を通じて開示を求める方法もあります。

口約束でも示談は成立しますか?

示談(和解契約)は、書面がなくても口頭の合意で成立しえます。ただし、口約束では合意の存在や内容を証明することが難しく、「言った・言わない」の争いになりがちです。口頭で約束してしまった場合も、内容と経緯を記録し、書面化に応じる前にご相談ください。

分割払いの途中で交渉し直せますか?

有効に成立した示談を一方的に変更することはできませんが、収入の減少など事情の変化があれば、相手方との合意によって支払条件を見直せる場合があります。滞納する前の、支払いが難しくなりそうな段階で早めに動くことがポイントです。

示談書にサインしてしまったら弁護士へご相談を

示談書にサインしてしまったら弁護士へご相談を解説するイメージ写真

今回は、慰謝料の示談書・誓約書にサインしてしまった場合の対応について解説しました。署名した示談書は原則として有効ですが、強迫や詐欺、錯誤、公序良俗違反にあたる事情があれば、取消しや無効を主張できる可能性があります。まずは示談書の内容と署名の経緯を整理し、追加の支払いの前に選択肢を確認することが大切です。

とはいえ、ご自身のケースで取消しを主張できるのか、支払いを続けるべきかを、おひとりで判断するのは難しいものです。

若井綜合法律事務所では、示談書にサインしてしまった方からのご相談を初回無料でお受けしております。24時間365日受付、LINEでのご相談にも対応しており、全国どこからでもご相談いただけます。ご相談内容は秘密厳守いたしますので、ご家族に知られたくないという場合もご安心ください。

時間が経ち、支払いを重ねるほど選択肢は狭まります。できるだけ早い段階で当事務所へご相談ください。