「これ、あなたのために買ったの」 誕生日やクリスマスに交際相手からプレゼントをもらう時、とても幸せな瞬間ですよね。 「今日は自分が出しておくよ」 相手のためにデートで奮発したくなること、ありますよね。 そんな幸せがいつまでも続けば良いのですが、男女の道のりは平坦ではありません。 時には別れて、別々の道を歩むということもあるでしょう。 そんな別れのタイミングで、今までもらったプレゼントやデート代をいきなり「返せ」と言われたら、どう対応したらよいのでしょうか。
弁護士が対処法を解説します
最近、交際関係を解消した後に相手から今まで使ったお金や物を返して欲しいと言われた、というご相談を非常に多くお受けします。
昔からポツポツと同様の相談はございましたが、ここ数年でかなり増えてきた印象です。
以前、こういったトラブルはキャバクラやクラブなどの女性と男性客との間で起きているという印象でした。
男性客がお店の女の子に熱を上げ、身の丈を超えて店を利用したり、プレゼントをしたりした後、結局交際には至らず、お金やプレゼントを返せと請求する事案ですね。
しかし、最近では普通のカップルの間でも同様のトラブルが多く起きております。
現金を直接渡しているケースもありますが、そうでない場合でも、例えば、デート代や旅行代金、プレゼントの相当額などを返せという請求を受けたという内容です。
中には過去数年にわたるデート代を詳細に記録しており、1円単位まで請求をしてくる相手もおります。
その熱意をもっと別のことに使えば良いのに…と思ってしまいますが。
弁護士の見解
結論から申し上げると、原則、お金を返す必要はありません。
法的に言えば、贈与契約(民法549条)に該当すると考えられるところ、もらったものは返す必要がないというのが基本的な考えになるからです。
まあ、当然と言えば当然ですよね。
もらった後に、返さなければならないとなれば、気軽にプレゼントをもらったり、デート代を出してもらったりできませんよね。
解除条件付の『贈与』であったという主張の場合
ただ、中には贈与契約に該当する場合でも、何とか理屈を作りこんでお金の回収をしようと考える相手もいます。
特に、相手方に弁護士が就いたりすると、色々な理屈を組み立ててきます。
時々目にするのが、解除条件付の贈与であったという主張です。
どんな主張かと言うと、とある約束(条件)を守ってくれるのであればあげるけど、その約束を守ってくれないのであればあげないよ、という主張です。
例をあげると「僕と週に1回は会って楽しく過ごしてくれるという約束をしたからお金をあげたのに、その約束を守らないから、返してもらうよ」という主張ですかね。
たしかに法的にはあり得ない主張ではありませんが、交際関係にあった間柄で、何らかの条件をつけて贈与をするというのは不自然としか言いようがありません。
また、こういった条件について、明確に契約書を作成するなどしていた場合であれば格別、LINEのやり取りの中でさりげなく出てきた話だったり、やり取りすら残っておらず、口頭で話しただけの内容だったりすると、条件とまでは評価できなかったり、そもそも証拠がないため認められなかったりするのが通常かと思います。
『詐欺』であったという主張の場合
また、詐欺に該当するからお金を返して欲しいという主張をしてくる相手もおります。
特に、相手方に弁護士が就いたりすると、色々な理屈を組み立ててきます。
時々目にするのが、詐欺であったという主張です。
どんな主張かと言うと、恋愛感情を利用して騙された、等という主張です。
例をあげると「お母さんの病院代が必要だというからお金をあげたのに、それは嘘だったから、返してもらうよ」という主張ですかね。
しかしながら、詐欺を主張する場合には、相手が「最初から騙すつもりであったということ」(故意)を証明しなければなりません。
誰の目から見ても騙したことが明らかと言えるような事例であれば格別、そうでなければ、相手の方が自ら「最初から騙すつもりだった、ごめん」と認めなければ、故意の証明は難しいでしょう。
特に、交際している間柄では、ビジネス上のコミュニケーションとは異なり、曖昧なやり取りも多く、より一層騙すつもりであったと評価することは難しいでしょう。
(結論)
以上のとおり、あげたものを取り戻すというのは簡単ではない訳です。
立場を変えていえば、一度もらったものを「返せ」と言われても「嫌だ」と言えば足ります。
では、法的な見解は上記のとおり簡単なのに、なぜ弊所に多くの相談が寄せられるのでしょうか。
弊所にご相談いただくケースを見ると、単にプレゼントやデート代を「返せ」と言われただけでなく、脅迫や強要の要素を含むケースが多いことが分かります。
例えば、返さなければ実家へ行く、職場へ行くといった訪問を匂わせるものや、弁護士に依頼して回収させる、訴訟を提起する、警察へ対応を要請するといった法的リスクを告知するもの、中には知り合いのヤクザに回収させるという直接的な脅迫に該当するものまであります。
また、上記のような脅迫や強要の要素を含むものでなくても「話にならない」「面倒くさい」「もう直接接点を持ちたくない」というご要望をお持ちでいらっしゃる方からご相談をいただくこともあります。
いずれにせよ、法的に義務がなければ「返せ」と言われても、プレゼントやデート代などを返す必要はありません。
まずは毅然とした態度でその旨伝え、しつこかったり、様々な揺さぶりをかけてきたりするようであれば、まずは弁護士にご相談ください。
対応方法としては、代理人として全ての対応窓口になり、法的な根拠のない相手の要求を拒否します。
また、物理的な接触に対しては、必要に応じて警察に対応を要請します。
不当な要求に応じる必要はありません。