• 請求された慰謝料が高額で、一括ではとても支払えない
  • 分割払いに応じてもらえるのか知りたい
  • 払えないまま放置したら、給料を差し押さえられないか不安

こんな悩みにお答えします。

慰謝料を請求されても、手元に支払えるだけの資力がないというケースは珍しくありません。しかし、「払えないから」と何もせず放置することは、最も避けるべき対応です。放置すれば訴訟から強制執行へと進み、給与の差押えによって職場に知られるおそれもあります。

一方で、払えない場合の対応には複数の選択肢があり、交渉しだいで現実に支払える形での解決は十分に可能です。

本記事でわかることは、以下のとおりです。

  • 慰謝料が払えないときに取りうる5つの選択肢
  • 分割払いや支払い猶予の交渉の進め方
  • 金額そのものを見直せる可能性
  • 支払わないまま放置した場合に起こること

最後まで読むことで、ご自身の状況に合った現実的な解決の道筋がわかります。ぜひ最後までご覧ください。

慰謝料が払えないときに取りうる5つの選択肢

慰謝料が払えないときに取りうる5つの選択肢を解説する図解

慰謝料を一括で支払えない場合に取りうる選択肢は、大きく次の5つです。

  • 選択肢1:分割払いを交渉する
  • 選択肢2:支払時期の猶予を求める
  • 選択肢3:金額そのものの見直しを求める
  • 選択肢4:一括での早期解決を提案する
  • 選択肢5:債務整理を検討する

どの選択肢が適しているかは、請求額が妥当な水準か、収入と生活の状況、相手方の態度がどの程度硬いかによって変わります。また、これらは択一ではなく、「金額の見直しを求めたうえで、減額後の金額を分割で支払う」というように、組み合わせて交渉するのが実務では一般的です。

共通する前提は、支払えないことを理由に連絡を絶たないことです。請求を無視すれば、相手方は「支払う意思がない」と受け取り、訴訟などの強硬な手段に進みやすくなります。誠実に交渉する姿勢を見せることが、相手方の譲歩を引き出す出発点です。以下、選択肢ごとに解説します。

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選択肢1:分割払いを交渉する

選択肢1:分割払いを交渉するを解説する図解

最も多く用いられるのが、分割払いの交渉です。ポイントは次の3つです。

  • 分割回数と月額の決め方
  • 分割払いを認めてもらいやすくする資料
  • 公正証書にする場合の注意点

分割回数と月額の決め方

月額は、収入から生活費を差し引いて、無理なく続けられる金額に設定することが重要です。交渉を早くまとめたいばかりに背伸びした月額で合意すると、途中で支払えなくなり、期限の利益喪失条項による残額の一括請求を受けるなど、かえって状況が悪化します。頭金をいくらか入れて誠意を示し、残額を毎月の分割にする、ボーナス月に増額するといった組み立ても、相手方の了解を得やすくする工夫です。

分割払いを認めてもらいやすくする資料

相手方にとって分割払いは、回収が長期化するうえ不払いのリスクを負う提案です。だからこそ、「本当に一括では払えない」ことを示す資料が交渉材料になります。給与明細や源泉徴収票、預貯金の状況、家計の収支をまとめたメモなどを準備し、求められたときに提示できる状態にしておきましょう。支払能力を隠していると疑われるより、実情を開示して現実的な提案をする方が、合意に至りやすくなります。

公正証書にする場合の注意点

相手方から、分割の合意を公正証書にすることを求められる場合があります。公正証書に「支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する」という強制執行認諾文言が入ると、不払いの際に、相手方は訴訟を経ずに給与などの差押えを申し立てられるようになります。応じること自体は珍しくありませんが、その意味を理解したうえで、確実に支払える条件になっているかを慎重に確認してください。

選択肢2:支払時期の猶予を求める

選択肢2:支払時期の猶予を求めるを解説するイメージ写真

収入の回復や資金の準備に時間が必要な場合は、支払時期そのものの猶予を求める方法があります。

  • 一定期間の据置きを提案する
  • 支払能力を示す資料を準備する

一定期間の据置きを提案する

「半年後から支払いを開始する」「転職先が決まった月から分割を始める」など、一定期間の据置きを提案する方法です。単に「待ってほしい」と頼むだけでは、支払いを引き延ばしていると受け取られかねません。いつから・いくらずつ・いつまでに支払い終えるのかをセットで示すことがポイントです。見通しのある提案であれば、相手方にとっても、回収できないリスクを抱えるより合理的な選択になりえます。

支払能力を示す資料を準備する

猶予を求める場合も、現在支払えない事情と、将来支払える見込みの両方を資料で裏付けることが大切です。失業中であれば離職票や求職活動の状況、休職中であれば復職の見込みがわかる資料などが考えられます。事情を具体的に示すことで、「支払いを逃れようとしている」という誤解を避け、交渉のテーブルを維持しやすくなります。

選択肢3:金額そのものの見直しを求める

選択肢3:金額そのものの見直しを求めるを解説するイメージ写真

そもそも請求された金額が適正とは限りません。支払い方法の前に、金額自体を見直せないかも検討してください。

  • 請求額の根拠を確認する
  • 減額を基礎づける事情を主張する
  • 早期解決と引き換えに調整する

請求額の根拠を確認する

不倫慰謝料の額は、婚姻期間、不貞行為の期間や態様、夫婦関係への影響などの事情を踏まえて判断されます。相手方の請求額が、裁判になった場合に認められる水準を大きく上回っているケースは少なくありません。まずは、請求額がどのような根拠で算定されているのかを確認し、裁判例の傾向と比較してみることが出発点です。

減額を基礎づける事情を主張する

相手方夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた、既婚者であることを知らなかった、不貞関係の期間が短かったといった事情は、慰謝料の減額につながる可能性があります。ご自身に当てはまる事情があれば、裏付けとなる資料とともに主張することで、金額の見直しを求める交渉材料になります。減額事情の詳細は、関連記事で解説しています。

早期解決と引き換えに調整する

相手方にも、「争いを長引かせたくない」「確実に回収したい」という利益があります。そこで、早期の解決と確実な支払いを約束する代わりに、金額の調整に応じてもらうという交渉が成り立ちます。「この金額であれば今月中に合意し、来月から確実に支払う」という提案は、双方にとって現実的な着地点になりえます。

選択肢4:一括での早期解決を提案する

選択肢4:一括での早期解決を提案するを解説するイメージ写真

まとまった資金を用意できる見込みがあるなら、減額と引き換えに一括で解決する方法も検討に値します。

  • 総額を抑えられる可能性がある
  • 資金の準備方法を検討する

総額を抑えられる可能性がある

相手方にとって、数年にわたる分割払いは、途中で支払いが止まるリスクを抱え続けることを意味します。そのため、金額が多少下がっても一括で確実に受け取る方が魅力的な場合があります。そのため、「減額してもらえるなら一括で支払う」という提案は、分割交渉よりも大きな減額につながる可能性があります。長期間支払いを続ける精神的な負担がなく、清算条項を入れて確定的に解決できる点もメリットです。

資金の準備方法を検討する

一括での解決額を用意する方法としては、預貯金の取り崩しのほか、親族からの援助や借入れが考えられます。一方、消費者金融やカードローンでの借入れは、高い金利負担によって生活がさらに苦しくなるおそれがあるため、慎重に判断すべきです。返済まで含めて無理のない資金計画が立つかどうかを、冷静に確認してください。

選択肢5:債務整理を検討する

選択肢5:債務整理を検討するを解説するイメージ写真

他にも借金があり、生活の維持自体が難しい場合には、自己破産などの債務整理が選択肢に入ることもあります。

  • 慰謝料が免責の対象となるかは事案による
  • 検討にあたって確認すべき点

慰謝料が免責の対象となるかは事案による

自己破産で免責許可が出ると、原則として債務の支払い義務は消滅しますが、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は免責されません(破産法253条1項2号)。不倫の慰謝料がこの「悪意」にあたるかどうかは、事案の内容によって判断が分かれます。免責されるとも、されないとも一概にはいえないため、安易な期待や悲観をせず、個別に確認することが必要です。

検討にあたって確認すべき点

債務整理は、慰謝料だけでなく借入れ全体を対象とする手続きであり、財産の処分や信用情報への登録など、生活への影響も伴います。慰謝料以外の債務の総額、収入と資産の状況、慰謝料が免責の対象となる見込みを整理したうえで、交渉による解決と債務整理のどちらが適しているかを、専門家とともに検討することをおすすめします。

支払わないまま放置した場合に起こること

支払わないまま放置した場合に起こることを解説する図解

最後に、交渉もせず支払いもしないまま放置した場合に何が起こるのかを確認しておきましょう。

  • 訴訟を提起される
  • 判決確定後に強制執行が可能となる
  • 給与が差し押さえられる
  • 預貯金や不動産も対象となる

訴訟を提起される

請求や督促を無視し続けると、相手方は「交渉では解決できない」と判断し、訴訟の提起に踏み切る可能性が高くなります。訴訟になれば、遅延損害金や訴訟費用の負担が加わり、支払総額はかえって増えかねません。訴状が届いた後も放置すれば、相手方の主張どおりの判決が出るおそれがあります。訴えられた場合の対応は、関連記事で解説しています。

判決確定後に強制執行が可能となる

判決が確定すると、相手方はそれを債務名義として、強制執行を申し立てることができます。強制執行認諾文言付きの公正証書で合意していた場合は、訴訟を経ることなく、不払いの時点で同様の手続きが可能です。強制執行の段階に入ると、支払うかどうかを自分で選ぶ余地はなくなります。

給与が差し押さえられる

強制執行の典型が、給与の差押えです。給与は原則として手取り額の4分の1まで差し押さえられ、完済まで毎月続きます。また、差押えの手続きでは裁判所から勤務先に通知が届くため、慰謝料の問題を職場に知られる直接のきっかけになります。差押えを避けたいのであれば、その前の段階で交渉により解決しておくことが不可欠です。

預貯金や不動産も対象となる

差押えの対象は給与に限りません。預貯金口座、生命保険の解約返戻金、自動車や不動産なども対象となりえます。口座が差し押さえられると、その時点の残高から回収が行われ、生活資金の引き出しにも支障が生じます。財産を隠して逃れようとすることは現実には困難で、リスクを増やすだけです。

慰謝料が払えない場合に関するよくある質問

慰謝料が払えない場合に関するよくある質問を解説するイメージ写真

最後に、慰謝料が払えない場合について、当事務所に多く寄せられるご質問にお答えします。

収入がなくても支払い義務はなくなりませんか?

収入や資産がないことを理由に、支払い義務そのものが消えることはありません。ただし、現実に回収できる見込みが乏しい相手に対しては、相手方も現実的な条件での解決に応じやすくなります。無収入であることは、猶予や分割、金額調整の交渉材料として活かすのが正しい使い方です。

分割払いの途中で払えなくなったらどうなりますか?

多くの合意書には、支払いを怠ると残額を一括で請求できる条項(期限の利益喪失条項)が入っています。滞納してから対応するのでは遅く、一括請求や強制執行に進むおそれがあります。支払いが難しくなりそうな段階で、早めに相手方との条件見直しの交渉に動くことが重要です。

差押えは勤務先に知られますか?

給与の差押えでは、裁判所から勤務先に差押命令が送達されるため、勤務先に知られることは避けられません。経理担当者が対応する手続きが発生するため、社内で把握される範囲も広がりがちです。職場に知られたくない場合は、差押えに至る前の交渉での解決が唯一の予防策といえます。

家族に支払ってもらう必要はありますか?

慰謝料の支払い義務を負うのは本人であり、親や配偶者などの家族が法的に支払い義務を負うことはありません(保証人になっている場合を除きます)。相手方から「家族に払ってもらえ」と迫られても、家族が応じる義務はなく、家族への執拗な請求はそれ自体が問題のある行為です。家族に接触してくるような場合は、対応方法を含めて弁護士にご相談ください。

慰謝料が払えずお困りなら弁護士へご相談を

慰謝料が払えずお困りなら弁護士へご相談を解説するイメージ写真

今回は、慰謝料が払えない場合の5つの選択肢について解説しました。分割払いや支払い猶予の交渉、金額そのものの見直し、一括での早期解決、そして債務整理まで、資力に応じた解決の道は複数あります。共通するのは、放置だけは避けるということです。放置の先にあるのは、訴訟と強制執行、そして給与差押えによって職場に知られるという、最も避けたい結末です。

とはいえ、いくらなら現実に支払えるのか、どの選択肢をどう組み合わせて交渉すべきかを、おひとりで組み立てるのは難しいものです。

若井綜合法律事務所では、慰謝料の支払いにお困りの方からのご相談を初回無料でお受けしております。24時間365日受付、LINEでのご相談にも対応しており、全国どこからでもご相談いただけます。ご相談内容は秘密厳守いたしますので、ご家族や職場に知られたくないという場合もご安心ください。

交渉の余地は、時間が経つほど狭まっていきます。支払いに不安を感じたら、できるだけ早い段階で当事務所へご相談ください。