※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(相談前の状況)

依頼者: Aさん(20代・女性)
状況: 店から高額の売掛金を肩代わりするよう請求を受けている

Aさんは、中国地方のキャバクラで勤務をしておりました。

その店では、利用客に売掛(ツケ)を認めており、手持ちが少ない場合でも飲食ができる店だったようです。

ある時、高額な売掛金を支払わないまま連絡が取れなくなってしまった利用客の存在が明らかになりました。その利用客が指名していたのは、もっぱらAさんであったようです。

それまで、Aさんと店舗との間で、売掛金が回収できなかった場合に、どのように清算を行うかについて話し合いをしたことはありませんでした。当然のことながら、清算方法について書面を取り交わしたこともありませんでした。

にもかかわらず、店舗はAさんに対して、売掛金を支払わずに飛んでしまった利用客の売掛金全額を肩代わりするよう請求がありました。金額は数百万円にのぼったようです。

Aさんは、なぜ自分が肩代わりしなければならないのか疑問に感じておりましたが、店舗はAさんの給料から勝手に清算分として控除し、さらに清算が完了するまでは無給で働くよう要求してきました。

Aさんが店舗側に金額や根拠を確認するも、曖昧な説明しかなく、また、最初に聞いた金額からどんどん増えていくという状況にあり、Aさんは限界を感じていました。

自宅や実家の住所も知られており、実際に、店舗の関係者が周辺をうろついていたこともあったことから、Aさんは自分での対応は難しいと考え、弊所に電話で連絡をしてきました。キャバクラ勤務で起こりやすいトラブルについては「キャバクラ嬢とお客との間で起きる3つのトラブルと対処法」でも解説しています。

弁護士の対応と解決への流れ

Aさんは、自分の住所が知られていることについて、強い不安を感じておりました。特に、店舗の従業員が、自宅や実家付近をうろついていたことを目撃し、店舗から逃げることは不可能であると考えていたようです。

当職からは、弁護士が全ての対応を引き取れば直接のやり取りをする必要はないこと、それでも相手方が自宅や実家を訪問してくるようであれば、最寄りの警察署に被害相談を行い、状況によっては対応を要請することを説明しました。

また、Aさんが利用客の売掛金を肩代わりする根拠が不明であったため、その点を店舗側に対して説明するよう求めるとともに、請求金額の裏づけも出すよう求めていく方針を説明しました。根拠がなければ支払わないと断固拒否する方針です。

さらに、勝手に給料から控除されていた金額について、根拠がないならば、返金を求めていくことも説明しました。

Aさんは、可能であれば、支払を受けることができたはずの給料を回収したいが、店舗側と関わりを持ちたくないので、これ以上の負担を回避し、退職できるのであれば、それで構わないという意向をお持ちでした。そのため、回収はあくまでベストシナリオとして、最低限、一切の関わりを解消するという方針で進めることが決まりました。

Aさんが強い不安を感じていたことから、ご依頼いただいた後、すぐに店舗に連絡をしました。

AさんやAさんのご家族など関係先に連絡することはせず、今後は全て窓口である当職宛に連絡するよう伝えた後、店舗がAさんに対して請求している金額を裏付ける資料、Aさんに対して肩代わりを請求する根拠を出すよう伝えました。

また、現在まで、Aさんの給料から、売掛金の清算として控除した金額を速やかに支払うよう請求しました。さらに、Aさんが退店する旨もあわせて伝えました。

店舗からは、退店は受け入れる、その他の点については確認のうえ連絡するとの回答がありました。

その後、店舗からの回答を待っていたのですが、いつまでも経っても連絡をしてきませんでした。

その点をAさんに報告すると、関わりを遮断することが最優先なので、これ以上の請求を受けるのでなければ、敢えてこちらから連絡をしないで欲しいとのことだったので、今後も店舗から何らかの連絡が来るようであれば当職で対応する旨説明し、一応の終件となりました。

解決結果と弁護士のコメント

請求額: 数百万円 解決額:支払わず
職場・家族: 職場や家族に知られずに解決

クラブやキャバクラにおいて、常連客に対する売掛(ツケ)を認める店は未だ残っておりますが、支払が滞った時に、誰がどのように清算をするのかという点でトラブルになることがあります。

法的な理屈とは別に、夜の世界特有のルールが存在しており、長年にわたって通用してきたことから、今でも担当したキャストが責任を持つのは当たり前であるという考えも存在しているところです。

キャストの側でも、店舗の責任者から、店のルールであると説明を受け、それが当然なのだと考えてしまって、過大な負担を受け入れているケースも目にします。

同じような夜の世界特有のルールとしては、遅刻や無断欠勤に対する罰金(給料からの天引き)や、従業員同士の連絡先の交換、従業員同士の交際に対する罰金などが挙げられます。

法的に整理するならば、違法な運用であると評価できるものもありますし、法的に何らかの義務を負う場合でも、不相当に過大な請求であると評価できる場合もあります。売掛金の返済義務が発生するケースや法的な整理については「ホストの売掛・未収が払えない!返済不要なケースを弁護士が解説」もご参照ください。

そのため、店舗側からの説明を鵜呑みにするのではなく、法的な観点から請求を精査するためにも、速やかに弁護士にご相談をいただきたいところです。

過去に対応した案件では、本件のように、無給や薄給で勤務継続を強いられるケースのほか、暴行を受けたというケースもございました。中には、総額で数千万円の支払をさせられたというケースもございます。

状況次第では、警察署に被害相談のうえ、対応を要請するということも必要になるかと思います。

なお、多くのキャストの方から、店舗側には反社会的勢力に属する(近い)人物がいるので怖いという話を伺います。

実際、ヤクザを含めた反社会的勢力に属する人物が店舗の経営に何らかの形で関わっているのかどうかは外部から窺えませんが、少なくとも、そのような人物の存在を店舗から匂わされた時は、速やかに警察や弁護士に相談をするべきでしょう。