※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(相談前の状況)

依頼者:Aさん(女性)
状況:相手方から過去に受け取ったお金の返金を請求されている

Aさんは性風俗店に勤務しておりました。そこに客として来たBさんに気に入られ、何度か店舗でサービスを提供することがありました。

新型コロナウイルスの影響で店に客が来なくなり、Aさんは退店をすることにしますが、Aさんのことを気に入っていたBさんから、退店後も個人的に会うことを希望され、これを受け入れます。AさんがBさんと会う時は、お手当として毎回数万円を受け取っていました。

Bさんと会う回数が増えるにつれ、Bさんの要求はエスカレートしていったようです。性行為のほか、動画の撮影を要求されるようになります。また、避妊をせずに性行為することを強く希望されるようになりました。

Aさんは妊娠や病気の可能性を考慮し、避妊するようBさんに対して伝えておりましたが、ある時、Bさんは避妊せず性行為に及び、結果Aさんは妊娠をしてしまいます。Aさんはやむを得ず中絶をしました。

その後もBさんとの関係は続いておりましたが、Bさんの行動はエスカレートし、Aさんの自宅付近をうろついたり、LINEで大量のメッセージを送ってきたりしたため、Aさんは恐怖を感じるようになります。

AさんはBさんと距離を取ろうと考え、体調不良であると嘘をついて、会うことを控えるようになりますが、その後もBさんはAさんに対してお金を振り込んできました。結局、Bさんから受け取った金額は、手当としてもらっていた金額を除いても、数千万円になっていました。

Aさんは、Bさんと会うことを控えておりましたが、LINEのやり取りは続けていたようです。そんなある日、突然、Bさんの親族を名乗る人物CさんからAさんに連絡がありました。

Cさんは激昂しており、Aさんの行為は犯罪行為であると指摘したうえで、今までAさんがBさんから受け取ったお金全額をすぐに返金するよう強く要求してきました。Cさんのあまりの勢いに圧倒されて混乱したAさんは、自分で対応することが難しいと考え、弊所に相談に来られました。

弁護士の対応と解決への流れ

Aさんの話を時系列で詳しく伺うと、受け取ったお金の大部分はもらったお金であり、返す必要はないと考えられましたが、一部借りたと認められる可能性のあるお金や、Bさんが誤解して出したお金もあったため、その部分のお金をどう扱うか検討する必要があることが分かってきました。

ただ、Bさん側から、貸したお金であることや詐欺や錯誤によって支払ったお金であるといった具体的な主張があった訳ではなく、証拠が出された訳でもなかったため、まずはBさんの請求内容を確認することからスタートすべきであると説明しました。

また、Bさんの親族を名乗るCさんから連絡を受けておりましたが、Cさんの身元やBさんの代理人として連絡をしてきているのかも不明であったことから、連絡先はあくまでBさんにすべきであることも説明しました。

Aさんは今後の方針を理解し、返すべきお金があるならば、一括は無理だが分割で返すという考えを持っていたものの、Bさんに連絡をしたとしてもCさんが再び出てくるのではないかと強い不安を持っており、自分で対応することは困難であるとのことであったため、当職で引き取って対応することとなりました。

ご依頼を受けた後、Bさんに対して、当職がAさんの代理人になったことや、Bさん側からお金を返すよう請求を受けているが、金額や法的根拠、事実関係が判然としないため、請求内容を整理して当職まで連絡が欲しいという内容の書面を送りました。

発送後、郵送状況を確認すると、Bさんは当職からの書面を受領していることが分かりましたが、Bさんから電話や書面で連絡が来ることはありませんでした。その間、Aさんは警察が家に来るのではないか、訴訟を提起してくるのではないかと不安を感じておられましたが、当方からボールを投げており、Bさんからの回答がなければ話し合いを進めることもできないので待つしかないと伝えました。

数か月が経過した後、Bさんから電話で連絡がありました。内容としては、当方からの書面に対して追って回答するという簡単なものでしたが、その後もBさんから連絡が来ることはありませんでした。

結局、その後も長期間にわたりBさんからの連絡が来ることはなく、また訴訟を提起されたという話も無かったため、Aさんに対して、今後、Bさんから何らかの連絡があれば当職で対応することを伝えたうえ、一応の終件とすることになりました。

解決結果と弁護士のコメント

請求額:約2000万円
解決額:現時点で返金はなし

性風俗店で知り合った客と店の外で個人的に会うようになり、手当としてお金を受け取ったり、性行為とは無関係にお金をもらったり、またお金を借りるというケースは少なくありません。

相手方との関係が良好であるうちは良いのですが、関係が長期間にわたって続くようになると、相手方が支払ってきたお金も相当の金額になりますし、双方の認識のズレが大きくなっていくこともありますので、トラブルに発展する可能性があります。

女性(ここでは性風俗店に勤務していた側を女性とします)は、性風俗店においてサービスを提供していたことの延長線上にあるものとして認識しており、基本的には仕事であると認識をしております。他方、男性(ここでは性風俗店を利用した客側を男性とします)は、店の外で会うようになったことから個人的な関係に至ったと考えたうえ、お金をあげたり、女性に様々な便宜を図ったりするのは、あくまで個人的な繋がりがあるからだと認識する傾向があります。

もちろん、女性が男性に対して将来結婚することを匂わせるなどしていれば(事情によっては詐欺に該当する可能性があります)、男性が誤解してしまうのもやむを得ないと言えますが、本件のように、あくまで仕事として対応し一線を引いていたにもかかわらず男性がのめり込んでくるケースも多くあるところです。

男性側の好意によるものであったとしても、個人的に多額の金銭を受け取ることはトラブルに発展する可能性があることを認識しておく必要があるでしょう。受け取ったお金の返還を求められた場合の法的な対応については「あげたものを返せと言われたら法律的に返す義務はある?」で詳しく解説しています。

本件のようにお金を返すよう請求を受けるだけであれば冷静に対処していくことも可能ですが、相手方がストーカー行為に及んだり、最悪の場合には身体に危害を加えてくる可能性もあります。感情的になった相手方は予想外の行動に出ることもありますので、不安を感じた場合には速やかにご相談いただきたく思います。