交際していた頃に相手が負担した遊興費を「返せ」と言われ、断れないまま毎月15万円を払い続けて4年近く。家族や職場に知らせると言われ、警察に相談しても動いてもらえない――。本記事では、弁護士が支払義務のないことを通告したことで支払いが止まり、相手方からの接触もなくなった経緯を紹介します。

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(ご相談前の状況)

交際中の遊興費の返還を求められ、毎月15万円を払い続けていた

依頼者は、関東地方在住の女性です。7年近くにわたって交際していた男性(相手方)との関係を解消した後も、金銭の支払いを求められ続けていました。

交際期間の途中から、相手方は働かない状態が続くようになり、日中はパチンコやスロットに通うようになりました。依頼者も誘われて同行するようになり、当初は自分のお金で遊んでいたものの、次第に相手方が費用を負担する形が定着していきます。依頼者が勝った際のお金は、相手方が受け取っていました。

この時期、依頼者は自身のキャッシュカードを相手方に預けていました。約4年間にわたり、依頼者の収入は相手方が管理し、そこから生活費として必要な分を依頼者が受け取るという状態が続いていたのです。

関係が終わりに近づくころ、相手方は「交際中に負担した遊興費を返せ」と依頼者に求めるようになりました。依頼者は、実際に費用を出してもらっていたことは事実であり、また相手方の説明を聞くうちに、返さなければならないものだと思い込んでしまいました。

こうして依頼者は、毎月15万円を現金で相手方の自宅ポストに投函するという生活を始めます。それが4年近く続き、支払った総額は600万円を超える規模に達していました。

依頼者にも生活があります。毎月15万円を捻出し続けた結果、家賃をはじめとする支払いが滞るようになり、生活そのものが立ち行かなくなっていきました。それでも支払いをやめられなかったのは、相手方から、支払わなければ家族から回収する、職場に連絡する、職場に行ってもよいと言われていたからです。

依頼者は警察にも相談しましたが、現段階では動けないという回答でした。どうすればよいかわからないまま支払いを続け、最終的に当事務所の男女トラブル相談窓口にご相談のうえ、ご依頼いただきました。

弁護士の対応と解決への流れ

返金請求ではなく「関係の清算」を目的に据える方針を確認

受任にあたり、担当弁護士はまず、依頼者が何を最も望んでいるのかを確認しました。

選択肢としては、支払ってしまった金銭の返還を求めていくことも考えられます。しかし依頼者のご意向は、お金を取り戻すことよりも、相手方との関係を完全に断ち切り、これ以上支払わなくてよい状態にすることでした。

実際、返還請求を選んだ場合には、相手方と交渉や訴訟を通じて関わり続けることになります。本件のように、支払わされていた経緯を裏づける証拠が限られている場合、長期化する可能性も否定できません。そこで担当弁護士は、依頼者のご意向に沿い、関係の清算を目的とする方針を採りました。

7年分の事実関係を依頼者とともに精査し、通告書を作成

方針を固めた後、担当弁護士は通告書の作成に取りかかりました。ここで重要になったのが、事実関係の正確な整理です。

交際が始まってからの期間は7年近くに及び、依頼者の手元には当時のメッセージ履歴がほとんど残っていませんでした。担当弁護士は書面案を作成したうえで、遊興費を負担してもらっていた期間はいつからいつまでか、キャッシュカードを預けていた期間とその間の金銭の流れはどうだったか、といった点を具体的に確認し、依頼者からの回答を受けて何度も書面を修正しました。

依頼者も、残っていた写真データや知人とのやり取り、ご自身の記憶を突き合わせて、時系列を再構成してくださいました。この作業を経て、交際期間、キャッシュカードを交付していた期間、毎月15万円の支払いを続けていた期間が、それぞれ特定されました。

完成した通告書には、相手方の請求に法的な根拠がなく、依頼者に支払義務がないことを明記しました。あわせて、今後、依頼者本人はもちろん、その家族や勤務先に対しても接触しないよう求め、以後の連絡はすべて代理人宛てに行うことを通告しました。

通告書の送付後、支払いも接触も止まった

通告書の送付後まもなく、相手方から当事務所に電話がありました。届いた書面の内容がよくわからないという趣旨の連絡でした。担当弁護士は後日折り返しの連絡を試みましたが、相手方が応答することはありませんでした。

そして、それ以降、相手方から依頼者本人への接触も、当事務所への連絡も、一切ありませんでした。毎月15万円の支払いは、通告書の送付をもって止まりました。返還を求める具体的な主張がなされることも、法的手続が取られることもないまま、3か月以上にわたって接触のない状態が続いたため、事件を終結しています。

依頼者からは、問題が解決したことへの感謝のご連絡をいただきました。

解決結果と弁護士のコメント

解決内容

  • 毎月15万円の支払いが、通告書の送付をもって停止
  • 年間180万円の支払いを継続していた状態から解放され、生活の立て直しが可能に
  • 家族や勤務先への連絡をほのめかされていた状況が解消
  • 弁護士の介入後、相手方から依頼者本人への接触が一切なくなった
  • 3か月以上にわたり請求も接触もないことを確認して終結

担当弁護士からのコメント―交際中のお金の返還を求められている方へ

交際中に相手が負担した費用は、後から返還を求められるのか

交際期間中、一方が食事代や遊興費を負担するというのは、ごく一般的なことです。こうした費用は、通常、その場で相手のために支出した贈与と評価されます。後になって「あれは貸していたものだ」として返還を求めても、法的な根拠が認められないことが多いといえます。

もちろん、当初から貸し借りとして合意していた場合や、借用書などの書面がある場合には話が変わります。しかし本件のように、交際中は何の取り決めもなく費用を負担していながら、関係が終わる段階になって初めて返還を求めてくるようなケースでは、返還義務が認められる可能性は高くないと考えられます。

なお、一度でも支払いに応じてしまうと、「支払っているのだから債務を認めていたのだろう」と主張されることがあります。しかし、支払った事実があることと、法的な支払義務があることは別の問題です。長期間支払い続けてしまった後であっても、そこで支払いを止めることは可能です。

「家族に言う」「職場に行く」と言われたら

本件で依頼者が支払いをやめられなかった最大の理由は、家族から回収する、職場に連絡する、職場に行ってもよいと言われていたことでした。

こうした言動は、金銭を支払わせる目的で相手を畏怖させるものであり、その態様によっては恐喝罪や強要罪に該当しうる違法な行為です。実際に勤務先へ押しかけるような行為があれば、業務妨害の問題も生じます。

もっとも、こうした発言が電話や対面でなされた場合、記録が残っていないことが少なくありません。本件でも、脅し文句そのものを裏づける証拠は残っていませんでした。だからこそ、同じような状況にある方には、可能な範囲で記録を残しておくことをおすすめします。通話の録音、メッセージのやり取り、支払った日時と金額のメモなどは、後の交渉や手続で重要な意味を持ちます。

警察に相談しても動いてもらえなかった場合

本件の依頼者は、ご自身で警察に相談されていましたが、現段階では動けないという回答を受けていました。

警察は、明確な犯罪行為が認められる段階でなければ、民事上のトラブルとして取り扱いを控えることがあります。特に、当事者間で金銭の授受が継続している場合、外形的には合意に基づく支払いに見えてしまい、被害として扱われにくいという事情もあります。

しかし、警察が動かないことと、法的に何もできないことは同じではありません。弁護士が代理人として介入し、支払義務がないことを明確に通告することで、請求自体が止まるケースは少なくありません。相手方としても、法的根拠のない請求を続けることのリスクを認識せざるを得なくなるからです。

収入を管理される関係は、別れた後も続きやすい

本件では、依頼者がキャッシュカードを相手方に預け、収入を管理されていた時期がありました。

こうした関係は、交際中は「生活を助け合っている」という形で始まることもあります。しかし、一方が他方の収入を把握し管理する状態が長く続くと、関係が終わった後も、金銭を渡すことが当然であるという感覚が残ってしまいます。本件の依頼者も、相手方の説明を聞くうちに、返さなければならないものだと思い込んでしまったと振り返っておられました。

ご自身の生活が成り立たなくなるほどの支払いを続けているのであれば、それは既に正常な関係ではありません。判断に迷う段階でも構いませんので、第三者に相談していただきたいと思います。

取り戻すことより、まず止めることを優先すべき場合があります

金銭の被害に遭われた方の多くは、「支払ったお金を取り戻したい」とお考えになります。当然のお気持ちです。

もっとも、返還請求を選ぶということは、相手方と関わり続けることを意味します。交渉が難航すれば訴訟に移行し、解決までに長い時間がかかることもあります。その間、精神的な負担は続きます。

本件の依頼者は、返金ではなく関係の清算を選ばれました。その結果、通告書の送付をもって毎月15万円の支払いが止まり、年間180万円の負担から解放されました。過去分を取り戻すことはできませんでしたが、将来にわたる支払いを止められたことの意味は決して小さくありません。

どちらを優先すべきかは、証拠の有無、相手方の資力、ご本人の状況によって変わります。ご相談いただければ、見通しを踏まえたうえで、一緒に方針を考えることができます。

お一人で抱え込まず、ご相談ください

元交際相手から金銭の返還を求められている、断れずに支払いを続けてしまっている、家族や勤務先に知らせると言われて怖い、警察に相談しても取り合ってもらえなかった――こうしたお悩みをお持ちの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。