関係がこじれた途端に「勤務先に伝える」と告げられ、高額な慰謝料を請求される。家庭にも職場にも知られたくない一心で、どう対応してよいかわからなくなる――。本記事では、弁護士が交渉を引き受け、解決金20万円と口外禁止を内容とする合意書を締結した経緯を紹介します。
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(ご相談前の状況)
勤務先に伝えると告げられ、高額な慰謝料を請求された
依頼者は、関東地方在住の会社員男性です。家庭を持つ一方で、職場の同僚である女性(相手方)と私的な交流を重ね、身体的な接触を伴う関係となっていました。
その後、両者の関係はこじれます。相手方は、このことを勤務先に伝えると告げたうえ、慰謝料の支払いを求めるようになりました。提示された金額は数十万円から100万円程度に及びます。
依頼者にとって、この件が勤務先に伝わることも、家庭に知られることも、避けたい事態でした。他方で、請求されている金額に法的な根拠があるのか、本当に支払わなければならないのかは判断がつきません。かといって当事者同士で話し合おうとすれば、感情的な対立が深まるばかりでした。
このまま個人で対応を続けることは難しいと判断された依頼者は、当事務所の男女トラブル相談窓口にご相談のうえ、その日のうちにご依頼いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
連絡がつかない相手方に、依頼者のアカウントから通知を届ける
受任にあたり、担当弁護士はまず相手方への連絡を試みました。しかし、相手方の携帯電話に架電しても通じず、留守番電話にもつながりません。何度か時間を変えて試みましたが、状況は変わりませんでした。
そこで担当弁護士は、依頼者のメッセージアプリのアカウントから受任通知を送信していただく方法を採りました。相手方が確実に確認できる経路を優先した判断です。依頼者のご意向も踏まえ、いきなり書面を送りつける形にならないよう、送信の前に一言添えていただく形にしています。
送信後、既読が確認できた時点で、依頼者には相手方をブロックしていただきました。これにより、以後の直接のやり取りは遮断されています。
相手方が直接連絡してきた局面で、交渉の糸口をつかむ
受任通知の送付後、しばらくの間、相手方から当事務所への連絡はありませんでした。担当弁護士は、依頼者と定期的に状況を共有しながら、経過を見守る方針を取りました。
そうしたなか、相手方が依頼者に対して直接連絡を取り、職場の同僚に伝えるという趣旨のことを告げてきました。ここで担当弁護士はすぐに動きます。相手方に架電したうえで、電話がつながらなかったため、ショートメッセージで代理人として連絡を受ける旨を改めて伝え、あわせて先に送付した書面を届けました。
これに相手方から返信があり、示談による解決を望んでいることがわかりました。相手方の生活状況から電話でのやり取りが難しかったため、以後はショートメッセージを用いて交渉を進めています。連絡手段が限られている場合でも、相手方が対応できる方法に合わせることで、交渉を前に進めることができます。
条件の優先順位を整理し、最も重要な目的を確保する
交渉では、合意書に盛り込む条項をめぐって意見が分かれました。
依頼者としては、今後一切の接触を禁じる条項を入れたいという希望がありました。しかし相手方はこれに強く抵抗し、接触禁止条項を設けることには応じられないという姿勢を崩しませんでした。
ここで担当弁護士は、依頼者と改めて優先順位を整理しました。依頼者にとって最も重要なのは、金銭請求を含む法的なリスクを確定的に解消することなのか、それとも今後の接触を断つことなのか。協議の結果、依頼者は前者を優先することを選択されました。
そこで担当弁護士は、接触禁止条項を外す代わりに、解決金の額を抑え、本件を第三者に口外しないことと、本件に関して双方に他に何らの債権債務がないことを確認する清算条項を確実に盛り込む方向で交渉をまとめました。最終的に、解決金20万円を支払う内容で合意が成立しています。
合意書は2通を作成して相手方に送付し、返信用の封筒を同封して返送を求めました。署名押印された書面が返送された後、当事務所の預り金口座を経由して解決金を送金し、履行を完了しています。ご相談から合意書の締結までは約2か月半でした。
解決結果と弁護士のコメント
解決内容
- 数十万円から100万円程度とされていた請求に対し、解決金20万円で合意
- 口外禁止条項により、勤務先や第三者に伝えられるリスクに対応
- 清算条項により、本件に関する一切の債権債務を清算
- 受任通知の送付後、依頼者が相手方と直接やり取りする必要がなくなった
- ご相談から合意書の締結まで約2か月半
担当弁護士からのコメント―慰謝料を請求されてお困りの方は弁護士にご相談を
関係がこじれた相手から、勤務先や家族に伝えると告げられたうえで金銭を請求されるというご相談は少なくありません。
まず申し上げたいのは、請求された金額をそのまま支払わなければならないとは限らないということです。慰謝料が認められるかどうか、認められるとしていくらが相当かは、当事者の関係、経緯、双方の言動によって判断が分かれます。相手方が提示した金額に、必ずしも根拠があるわけではありません。
また、支払わなければ勤務先に伝えると告げて金銭を要求する行為は、その態様によっては恐喝罪などの問題を生じさせる場合があります。もっとも、相手方に正当な損害賠償請求権がある場合には、権利行使との線引きが微妙になる場面もあります。この見極めは、事案ごとに慎重な検討を要する部分です。
そして、この種の事案で最も大切なのは、書面で終わりにすることです。恐怖や焦りから請求に応じて支払ってしまっても、書面がなければ、後日また別の名目で請求が蒸し返されるおそれがあります。清算条項を含む合意書を締結してはじめて、法的なリスクが確定的に解消されます。
本件で特に重要だったのは、条件の優先順位を整理した点です。依頼者は当初、今後一切接触しないという条項を強く望まれていましたが、相手方がこれに応じませんでした。すべての希望を通そうとすれば交渉は決裂し、いつまでも不安定な状態が続くことになります。担当弁護士が依頼者と協議し、最も重要な目的が法的リスクの解消にあることを確認したうえで、その一点を確実に確保する方針に切り替えたことが、早期の解決につながりました。
交渉においては、何を最優先に守るのかをご本人が決めることが欠かせません。弁護士の役割は、それぞれの条項が持つ意味と、譲った場合に残るリスクを正確にお伝えしたうえで、ご本人が納得して判断できる状態をつくることだと考えています。
なお、相手方と連絡が取れないというケースも珍しくありません。本件でも、電話が通じない状態が続きましたが、ご本人のアカウントを通じた通知やショートメッセージを組み合わせることで、相手方に確実に内容を届け、交渉を進めることができました。連絡がつかないという理由で諦める必要はありません。
関係のもつれから高額な慰謝料を請求されている方、勤務先や家族に伝えると言われてお困りの方、どこまで応じるべきか判断がつかずお悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
