好意から自分名義で借りた部屋に交際相手を住まわせたところ、関係が悪化しても退去してもらえず、家賃だけが自分に請求され続ける――。本記事では、弁護士が交渉によって明渡しを実現し、立替金の清算についても合意書を締結して解決した経緯を紹介します。
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(ご相談前の状況)
名義を貸した部屋から交際相手が退去しない
依頼者は、関西地方在住の会社員男性です。仕事上の縁で知り合った女性(相手方)が住まいに困っており、ご自身では賃貸借契約の審査が通らない状況にあったことから、依頼者が自分名義で賃貸借契約を締結し、その部屋に住んでもらうこととしました。その後、二人は交際するようになりました。
ところが、相手方は依頼者に無断で第三者を同居させ、さらにペットの飼育が認められていない物件で犬を飼うなど、賃貸借契約に違反する状態となりました。契約名義人である依頼者は、貸主に対して責任を負う立場にあり、放置できない状況に置かれていました。
依頼者が関係の解消と退去を申し入れたところ、相手方からは「すぐに出られるわけがない」と拒まれ、その後は話し合いに応じてもらえなくなりました。他方で家賃や光熱費の負担は依頼者に残り続け、いつまで続くのか見通しが立たない状態でした。残置物を置いたまま出ていかれるのではないかという不安もあり、依頼者は当事務所にご相談くださいました。
弁護士の対応と解決への流れ
明渡しを最優先に据え、交渉と法的手続の両面から準備
担当弁護士は、依頼者にとって最優先の目的が「部屋を明け渡してもらうこと」にあることを確認したうえで、方針を組み立てました。まず依頼者には、相手方と顔を合わせても直接やり取りをしないよう助言し、以後の交渉窓口をすべて当事務所に一本化しました。
そのうえで、担当弁護士は相手方と直接電話で交渉を重ねました。相手方は当初、住まいの確保が難しいことを理由に、長期間の猶予を求めてきましたが、担当弁護士は、依頼者が契約名義人として負担を負い続けている状況を説明し、公的な支援窓口の利用も含めて検討するよう促しながら、現実的な退去期限の設定を求めました。交渉の結果、相手方は期限までに退去することを了承しました。
並行して、担当弁護士は、交渉が決裂した場合の法的手続を見据え、職務上請求により相手方の住民票等の調査を行いました。しかし、複数の自治体に照会しても相手方の住民登録は確認できず、訴訟を提起しようにも相手方の住所を特定することが困難であることが判明しました。
そこで担当弁護士は、訴訟に頼らずに解決できる枠組みを整えるため、合意書による解決へと方針を切り替えました。退去の履行を確保しつつ、立替金の清算までを一つの書面にまとめる内容とし、依頼者と協議のうえ文言を調整しました。
その後、相手方は期限までに部屋を明け渡し、鍵を当事務所宛に返送しました。依頼者に室内を確認していただいたところ、懸念されていた残置物や目立った損傷もありませんでした。最終的に、家賃・電気代・ガス代等の立替分について、相手方が分割で弁済することを内容とする合意書の締結に至り、実際に毎月の弁済が開始されました。ご相談から解決までは約4ヶ月弱でした。
解決結果と弁護士のコメント
解決内容
- 交渉により、期限内での明渡しを実現(ご相談から約1ヶ月半)
- 残置物や室内の損傷もなく、原状のまま部屋の返還を受けた
- 立替金約39万円について、分割弁済を内容とする合意書を締結
- 弁護士が窓口となり、依頼者が直接相手方と対応する必要がなくなった
担当弁護士からのコメント―交際相手が退去しない場合は弁護士にご相談を
ご自身の名義で借りた部屋に交際相手や知人を住まわせるケースは少なくありませんが、後にトラブルとなった場合、契約上の責任はすべて名義人であるご本人に及びます。家賃の滞納も、無断同居やペット飼育といった契約違反も、貸主との関係では名義人の責任として扱われるのが原則です。安易に名義を貸すことは、大きなリスクを伴う場合があります。
また、居住している方に退去してもらうには、法的にはハードルがあります。実力での追い出しは認められておらず、話し合いがつかなければ、最終的には明渡しを求める裁判手続によることになります。もっとも本件のように、相手方の住民登録が確認できず、そもそも訴訟の相手方を特定できないという事態も起こり得ます。裁判が現実的な選択肢とならない場合には、交渉によって退去期限を確定させ、合意書という形で残しておくことが有効な場合があります。
本件では、明渡しという最優先の目的を達成したうえで、立替金の清算についても書面化することができました。関係が続いている間は言い出しにくくても、こじれてからでは選択肢が狭まります。
名義を貸した部屋から交際相手が出ていってくれない、家賃を立て替え続けているといったお悩みをお持ちの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
