交際していた頃に撮影された性的な動画が、まだどこかに残っているかもしれない。連絡も取れなくなり、いつ流出するかわからないまま日々を過ごす――。本記事では、転居していた相手方の所在を特定したうえで書面を送付し、約1か月で削除と不拡散を約束する誓約書を取得した経緯を紹介します。

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(ご相談前の状況)

削除したと言われても、流出の不安が消えなかった

依頼者は、関東地方在住の女性です。交際していた男性(相手方)から、性行為の様子を動画で撮影されたことがありました。依頼者は撮影を望んでいませんでしたが、関係が悪くなることを恐れて、はっきりと断ることができませんでした。

その後、相手方からは、動画が入っていた携帯電話を紛失したこと、クラウド上のデータも削除したことを伝えられました。しかし依頼者としては、新しい端末にバックアップが残っているのではないか、本当にすべて消えたのかという疑念を拭うことができません。

やがて相手方からの連絡は途絶え、交際関係も自然に終わりました。問題は、動画の行方がわからないまま関係だけが終わってしまったことです。いつ流出するかわからない、誰かの目に触れるかもしれない。そうした不安を抱えたまま1年以上が経過していました。

警察に相談したことはなく、どこに相談すればよいのかもわからない状態でした。日々怯えて過ごすことに限界を感じた依頼者は、インターネットで検索して当事務所を見つけ、ご相談のうえ、ご依頼いただきました。

弁護士の対応と解決への流れ

見通しを率直に説明したうえで受任

受任にあたり、担当弁護士はまず法的な見通しをお伝えしました。

本件では、動画が実際に流出したり、相手方が拡散をほのめかしたりした事実はありません。この段階では、削除や誓約を法的に強制することは難しく、相手方の任意の協力を求めていく交渉になります。担当弁護士は、この点を率直に説明したうえで、それでも弁護士が代理人として書面を送ることには意味があることをお伝えし、ご依頼をお受けしました。

転居していた相手方の所在を特定

ところが、着手してすぐに問題が生じます。依頼者が把握していた相手方の住所には、すでに相手方が住んでいませんでした。

担当弁護士は、職務上請求により相手方の住民票の取得を進めました。当初の住所では転出済みであることが判明したため、続けて転出先の自治体に請求を行い、相手方が遠方の地域に転居していることを突き止めました。

書面が届かなければ、交渉そのものが始まりません。相手方の現住所を確実に押さえたうえで、次の段階に進みました。

受任通知と誓約書を同時に送り、返送しやすい状態を整える

担当弁護士は、受任通知書とあわせて、相手方に差し入れてもらう誓約書の案を作成しました。

本件で意識したのは、相手方が速やかに応じやすい形を整えることです。書面のやり取りを何度も重ねるうちに相手方が態度を硬化させたり、そもそも応答しなくなったりするリスクがあるため、最初の一通で完結できる設計としました。

送付方法も二重にしました。受任通知書は内容証明郵便で送り、通知の内容と送付日を客観的に残します。これとは別に、受任通知書と誓約書、記入方法のガイド、そして返信用の封筒を同封した書留を送付しました。いずれも「親展」としています。相手方にとっては、届いた書面に署名して同封の封筒で返送するだけで済む状態です。

書面の到達から数日で、誓約書が返送された

書面が届いてまもなく、相手方から当事務所に電話がありました。受任通知を読んだこと、その日のうちに誓約書を返送したいこと、そして手元に印鑑がないが指印でも構わないかという内容でした。担当弁護士は指印で差し支えない旨を回答しています。

その後、署名押印された誓約書が当事務所に返送されました。動画等のデータを削除すること、今後一切これを拡散しないことなどを内容とするものです。担当弁護士は内容を確認のうえ、誓約書の原本を依頼者にお渡ししました。

ご依頼から誓約書の取得までは約1か月でした。相手方の所在調査に要した期間を含めても、短期間での解決となっています。

解決結果と弁護士のコメント

解決内容

  • 性的な動画の削除と不拡散を内容とする誓約書を相手方から取得
  • 転居先が不明だった相手方の所在を特定し、確実に書面を到達させた
  • 書面の到達から数日で相手方が応諾し、ご依頼から約1か月で解決
  • 依頼者が相手方と直接やり取りすることなく完了
  • 金銭の支払いなく解決

担当弁護士からのコメント―撮影された動画や写真が不安な方は弁護士にご相談を

交際中に撮影された性的な動画や写真が、関係の終了後も相手方の手元に残っているのではないか。このご不安を抱えたままお過ごしの方は、決して少なくありません。本件の依頼者も、1年以上にわたって流出の恐怖を抱えたまま生活されていました。

法的な観点から申し上げると、この種のご相談には難しさがあります。実際に動画が公表されてしまった場合には、いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)の問題となり、名誉毀損罪などが成立する可能性もあります。また、拡散するぞと告げて相手を畏怖させる行為は、脅迫罪に該当しうるものです。しかし本件のように、まだ何も起きていない段階では、削除や誓約を法的に強制することは容易ではありません。相手方の任意の協力を引き出す交渉が中心となります。

それでも、弁護士が代理人として書面を送ることには大きな意味があります。弁護士名義の書面が届いたという事実そのものが、相手方に対して強い心理的な抑止力として働きます。本件でも、書面が到達してから数日のうちに相手方から連絡があり、誓約書はすみやかに返送されました。長年悩まれていた問題が、一通の書面で動いたことになります。

交渉の進め方にも工夫が必要です。書面のやり取りを重ねるほど、相手方が身構えて態度を硬化させたり、応答しなくなったりするおそれがあります。本件では、受任通知と誓約書、記入方法の案内、返信用の封筒までを一度に送り、相手方が署名して返送するだけで完了する状態を整えました。相手方に検討や逡巡の余地を与えず、その場で応じてもらう形にすることが、こうした事案では有効に働きます。

また、相手方が転居して所在がわからないというケースも珍しくありません。ご本人では住民票を取得することができませんが、弁護士であれば、受任している事件の処理に必要な範囲で職務上請求を行うことができます。相手方の居場所がわからないという理由で諦める必要はありません。

なお、取得した誓約書に法的な強制力がないのではないかと心配される方もいらっしゃいます。確かに、誓約書があれば絶対に拡散されないと保証できるものではありません。しかし、相手方が自ら署名した書面が存在することは、万一の場合に相手方の責任を追及するうえで重要な意味を持ちますし、何より、書面を差し入れたという事実自体が今後の抑止力となります。

交際中に撮影された動画や写真が残っていないか不安な方、削除や不拡散の約束を取り付けたい方、相手方と連絡が取れずお困りの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。