結婚することを伝えたところ相手が態度を一変させ、「会社を辞めることが責任の取り方だ」「辞めなければこのことを周囲に伝える」と迫られる――。本記事では、弁護士が受任通知を送付したことで相手方からの接触が完全に止まり、金銭の支払いも退職もなく解決した経緯を紹介します。

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(ご相談前の状況)

「会社を辞めろ」「慰謝料を払え」と迫られた

依頼者は、関東地方在住の会社員男性です。長年にわたり親しくしていた女性(相手方)と、一時期、男女の関係を持ったことがありました。相手方は、依頼者と同じ会社に勤務しています。

その後、依頼者は結婚することとなり、相手方にその旨を伝えました。しかし相手方は、なぜもっと早く伝えてくれなかったのか、自分の気持ちにどう責任を取るのかと強く反発しました。

依頼者自身も、相手方に好意を抱いていた時期があったこと、結婚の事実を伝えるのが遅れたことについては、自らの落ち度と受け止めていました。動揺した依頼者は、その場を収めようとするあまり、仕事を辞めて考えるという趣旨のことを口にしてしまいます。

ところが相手方は、この発言を前提に、会社を辞めることがまず責任を取ることだ、辞めなければこのことを周囲に伝えると繰り返し求めるようになりました。あわせて、100万円を超える慰謝料の支払いも要求されました。

依頼者にとって、その会社での収入は新しい家庭の生計を支えるものであり、辞めるという選択はできません。他方で、自分が何をどこまで負うべきなのかも判断がつかない。板挟みの状態に置かれた依頼者は、当事務所の男女トラブル相談窓口にご相談のうえ、ご依頼いただきました。

弁護士の対応と解決への流れ

受任通知の文面を検討し、依頼者の疑問にも回答

受任にあたり、担当弁護士はまず受任通知書を作成し、依頼者にご確認いただきました。

その際、依頼者から、書面にある「文書(手紙、FAX、電子メール等を含む)」という表現に、SNSのダイレクトメッセージも含まれるのかという質問が寄せられました。担当弁護士は、この表記がストーカー規制法の条文に倣ったものであるため、文言上あえて「SNS等」を書き加えることは差し控えていること、もっとも実務上は、SNSを通じた接触があった場合に警察に相談すれば、同法に基づく警告の対応が取られるケースが多いことを説明しました。

書面の一言一句が、その後の相手方の行動を左右することもあります。依頼者が納得したうえで介入に進めるよう、疑問点にはその場で回答するようにしています。

介入の手順を具体的に指示し、連絡経路を一つに絞ってから通知

本件で特に重要だったのが、受任通知をどのように届けるかという段取りです。担当弁護士は、依頼者に対して次の手順を具体的に指示しました。

まず、想定される連絡手段のうち、メッセージアプリを除くすべて、すなわち電話、メール、各種SNSのダイレクトメッセージ、ショートメッセージなどを、着信拒否やブロックの設定によって遮断していただきました。新しいアカウントや別の電話番号から連絡してくるケースもあるため、登録外着信や非通知着信の拒否設定、SNSの非公開設定についてもあわせてご案内しています。

連絡手段が一つに絞られたことを確認したうえで、受任通知書のデータをそのメッセージアプリで相手方に転送していただきました。メッセージを添える必要はありません。そして、転送した書面に既読がついた時点でスクリーンショットを保存し、相手方をブロックする。トーク履歴は削除せずに残しておく。この手順を経ることで、通知が相手方本人に届いたことを客観的に残しつつ、以後の直接のやり取りを完全に遮断できます。

あわせて担当弁護士は、介入直後こそ相手方の感情が最も高ぶる時期であることを説明し、身の危険を感じる場合には一時的な避難や警察への相談を検討すること、直接訪問など差し迫った危険がある場合にはためらわず110番通報することを、事前にお伝えしていました。

介入後、相手方からの接触は一切なくなった

依頼者は指示された手順どおりに対応され、深夜に既読を確認したとのご連絡をいただきました。

その後、担当弁護士は定期的に状況を確認しました。介入から1週間の時点でも、2か月が経過した時点でも、相手方から当事務所への連絡はなく、依頼者本人への接触もありませんでした。

退職を求められることも、慰謝料を請求されることもないまま、相手方からの働きかけは完全に止まりました。接触のない状態が続いたことを確認したうえで、ご相談から約3か月で事件を終結しています。

解決結果と弁護士のコメント

解決内容

  • 退職の要求に応じることなく、依頼者は勤務を継続
  • 100万円を超える慰謝料の請求に対し、支払いゼロで解決
  • 受任通知の送付後、相手方からの接触が一切なくなった
  • ご相談から約3か月で終結

担当弁護士からのコメント―退職や金銭を迫られてお困りの方は弁護士にご相談を

親しくしていた相手に結婚を伝えたところ関係が悪化し、責任を取るよう迫られるというご相談は、決して珍しいものではありません。

まず前提として、誰と結婚するか、交際関係をどうするかは、本来それぞれの当事者が自由に決められることです。結婚したこと自体や、その事実を伝えるのが遅れたことによって、直ちに法的な賠償責任が生じるわけではありません。既婚であることを積極的に偽って交際していたようなケースでは、いわゆる貞操権の侵害として慰謝料が問題となることもありますが、そうでない場合にまで当然に責任が生じるとは限りません。

とりわけ、退職を求める要求に応じる義務はありません。どのような職業に就き、どこで働くかは、その方自身が決めることです。第三者が退職を強制できる法的根拠はどこにもありません。むしろ、退職しなければ周囲に伝えるといった形で相手を畏怖させ、意思に反する行為を求める言動は、その態様によっては強要罪や脅迫罪の問題を生じさせる場合があります。

また、本件の依頼者のように、その場の動揺から「仕事を辞めて考える」といったことを口にしてしまう方は少なくありません。しかし、そうした発言だけで法的な義務が生じるものではありません。感情が高ぶっている場面での言葉を根拠に要求が続いているのであれば、早い段階で専門家にご相談いただきたいと思います。

なお、この種の事案では、介入の方法そのものが結果を左右します。連絡手段を一つに絞ったうえで通知を届け、到達を確認してから遮断するという手順を踏むことで、通知が相手方本人に届いたことを客観的に残しつつ、以後の接触を断つことができます。また、介入直後は相手方の感情が最も高ぶる時期でもあります。だからこそ、あらかじめ危険が生じた場合の対応まで具体的にお伝えしたうえで進めることが重要だと考えています。

関係の解消や結婚を機に金銭を要求されている方、退職を迫られている方、周囲に伝えると言われて不安を抱えている方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。