※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(相談前の状況)

依頼者:Aさん(20代・女性)
状況:マッチングアプリで会った相手に盗撮されてしまった

Aさんは交際相手を探す目的でマッチングアプリを利用していました。

ある日、Bさんという男性とマッチし、複数回やり取りをしたところ、感じの良い方であったため実際に会うことにしました。

その後、Bさんとは数回会い、ホテルに行って性行為に及びましたが、いずれの時も、BさんはAさんに隠れて性行為の様子を撮影していました。AさんはBさんの撮影行為に気づいていましたが、その点を指摘したらBさんを怒らせてしまうのではないかと考え、何も言えずにいました。Aさんとしては、Bさんと交際することも考えていたようです。

しかしながら、Bさんとは交際関係に発展せず、そのまま連絡を取る頻度は減っていきました。

ここでAさんは、Bさんに撮影された画像がネット上に拡散されてしまうのではないだろうかと不安になります。自分でBさんに対して撮影の事実を指摘したうえ、画像の削除を求めることも考えましたが、Bさんの反応が怖く、躊躇していました。

そんな中で、できることはないかと弊所にご相談に来られました。

弁護士の対応と解決への流れ

Aさんから話を伺い、マッチングアプリでBさんと出会ったとのことであったため、Bさんの身元に関する情報はどの程度把握しているのかを確認しました。

Aさんからは、本人が名乗っていた漢字フルネームは分かるものの、住所は知らず、また電話番号も知らないとのことでした。また、Bさんとの連絡手段は、マッチングアプリの後、LINEのみであったとのことでした。

そのため、当職からBさんがどこの誰であるのかが分からないと対応は難しい、また連絡手段がLINEのみとなると、LINEからメッセージを送るという方法も考えられるが、Bさんに無視をされ、ブロックをされてしまったらそれ以上対応ができない可能性があると説明しました。

すぐに介入できるだけの状況ではなかったため、Bさんの身元特定につながる情報の入手ができないかご検討いただくことにして、その日の相談を終えました。

その後しばらくして、Bさんの電話番号を入手することができたとAさんから連絡がありました。電話番号があれば、弁護士会照会という手続によってBさんの身元を特定できる可能性もあるため、その旨説明したところ、Bさんの身元が判明したら、盗撮の事実の確認と画像の削除を申し入れ、すべての画像が削除済であることを確認する書面の取り交わしを行いたいとのご要望があったため、当職でお受けして対応することになりました。

弁護士会照会の手続でBさんの携帯電話番号の契約者情報を調べると、Bさんが名乗っていた名前での契約の存在が確認でき、その後、住所地と思われる役所に住民票の開示を請求したところ、Bさんが現在居住していると思われる住所が判明しました。

Bさんに対して書面を送付することができる状況が整いましたが、Bさんの家族関係が不明であったため、まずは電話で連絡を行い、次にLINEで当職作成の書面のデータを送ってもらい、それでも連絡が取れなければ、住所地に書面を送るという流れで進めることになりました。

当職からBさんに対して何度か連絡をするものの、知らない番号からの着信であったことから折り返しはありませんでした。次に、LINEで当職作成の書面を送ってもらうと、既読になったことが確認できました。

そこでBさんからの連絡を待っていると、当職宛にメールで連絡がありました。Bさんは盗撮の事実を認めたうえ、画像は既に削除済であると説明しました。

当職からは、物理的にすべての画像データが削除されたことを確認することは難しいので、削除済であることや他にデータは保存していないこと、拡散など行為はしていないことを確認する条項を設けた合意書を作成したいと申し入れました。

Bさんは、合意書の取り交わしに応じ、さらに迷惑をかけたとしてAさんの弁護士費用相当額を解決金として支払いたいと回答してきました。

その後、Bさんとの間で合意書を取り交わし、解決金を受領して終件となりました。

解決結果と弁護士のコメント

解決金:弁護士費用相当額
画像データ:削除済であることを書面で確認
合意書:拡散行為を行っていないことを確認する条項を含む内容で締結

マッチングアプリで出会った相手との間ではトラブルになることが少なくありません。簡単なやり取りの後、本件のようにLINEで連絡を取るのみであったりすると、相互に相手の身元が分からないまま話が進みます。盗撮被害の手口や対処法については「パパ活での盗撮の手口と効果的な防止策・被害時の対処法を解説」でも詳しく解説しています。

身元が判明していないという状況は、悪意をもった人物にとって願ったりかなったりの状況です。マッチングアプリで知り合った相手にお金を騙し取られた、性的な被害を受けたといった犯罪行為に該当するようなケースも散見されるため、利用には十分な注意が必要と言えるでしょう。マッチングアプリを含む恋愛トラブルの類型と対処法については「よくある8つの恋愛トラブルと対処法」もあわせてご確認ください。

トラブルを回避するのであれば、マッチングアプリで知り合った相手が信用に足る人間であるかを慎重に見極めていただくしかありません。そもそも、どこの誰であるか分からないのでは信用することはできません。ある程度、個人的な情報を秘匿したまま関係をスタートできるという点がマッチングアプリの良さであるのかもしれませんが、少なくともお金を渡したり、性的関係を持ったりするのであれば、後にトラブルになる可能性も考慮し、可能な限り、身元を確認するようにしましょう。

最近はほとんどの方が携帯電話をお持ちになられているかと思いますが、携帯電話の通話機能を使う方は少なく、LINE電話などを利用されるケースが多いかと思います。事例でも説明したとおり、現在、弁護士の調査によってLINEの相手方の身元を特定することはできません。電話番号や車のナンバー、銀行口座の情報などが必要になります。

お金を渡したり、性的関係を持ったりする相手方との連絡手段が、LINEのみである場合には注意が必要です。容易にブロックされ連絡が取れなくなり、その後も、身元を辿れないということが起こり得ます。

刑事事件に該当し、警察の捜査が始まれば、相手方の身元を特定することもできるのかもしれませんが、仮に刑事事件に該当するような事実があっても、裏付けとなる証拠がなければ警察は基本的に動くことができません。

携帯電話の通話機能があまり利用されなくなった状況で電話番号を聞くことは不自然なのかもしれませんが、トラブルを回避する、万が一トラブルになった後も対応できるようにしておくという観点からは、最低でも電話番号を入手しておいた方が良いと言えるところです。

本件では幸運にもBさんの電話番号を入手することができたため、Bさんの身元を確認することができ、Bさんが無視を続けた場合にも対応できるだけの状況を整えることができました。

LINEしか連絡手段がないというケースは多くご相談いただきますが、本件のように、後になって電話番号が入手できたというケースはレアであると言えます。トラブルによって全面的に対立した後はもちろん、悪意のある人物であれば、余計な情報を提供することはありません。

トラブルになった後にできることは少ないという認識をお持ちいただきたく思います。