※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(相談前の状況)
依頼者:Aさん(女性)
状況:相手方から受け取った物や金銭の返還を請求されている
Aさんは某企業で勤務をしておりましたが、取引先に所属していたBさんと仕事上、顔を合わせる機会が多くありました。
AさんはBさんに対して何ら特別な感情を持っておりませんでしたが、BさんはAさんに対して好意を持ち始めたようです。Aさんの職場を訪問する度に、お菓子やお酒をプレゼントとして持ってくるようになり、その際、他愛もない会話をすることもありました。
Bさんの行為について、Aさんは取引上のお付き合いくらいにしか考えておりませんでしたが、ある時、BさんがAさんに対して現金を渡そうとしてきました。さすがに現金をもらう理由も無かったので丁重に断りましたが、Bさんは食い下がり、さらに感情的になってお金を受け取るようAさんに迫りました。
今後トラブルになるかもしれないと考えていたため、受け取りたくはなかったのですが、Bさんの勢いに押されて、一応現金を受け取ることにしました。
その後もBさんからのプレゼントは止まらず、Aさんに個人的なメッセージを送ってくるようになりました。Bさんは、Aさんと一度仕事外で会いたいと言い始め、取引先でもありましたし、現金を受け取っていた負い目もあったことから、Aさんは一度だけ仕事外でBさんと食事に行きました。
その後、勢いがついたBさんから交際を迫る連絡が頻繁に来るようになりました。Aさんは交際する気はないこと、物を受け取ることもできないことを伝えましたが、Bさんは全く聞く耳を持たず、Aさんと個人的に会うことを希望し続けました。
AさんがBさんの申し出を強く断ると、Bさんは突如として態度を変え、今まで渡した物やお金を返して欲しいと言ってきました。物については返すことができなかったためその旨を伝え、お金については、もともと返すつもりであったため、Bさんの口座に振込で返金をしました。
しかし、その後もBさんは何事も無かったかのようにAさんに迫ってきたため、困り果てたAさんは職場に説明し、Bさんの担当を外してもらうことにしました。そのうえで連絡をブロックすると、職場や自宅に請求書と題する書面や手紙に加え、プレゼントなのか物が届くようになりました。
Bさんに自宅の住所を教えていなかったにもかかわらず、何らかの方法で住所を知り、連絡をしてきたBさんの行動に恐怖し、Aさんはすぐに警察に相談をしました。
しかしながら警察の回答は、すぐに事件として処理をすることはできない、何かあれば110番通報をして欲しいというもので、解決には至りませんでした。困り果てたAさんが弊所にご相談に来られました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんの話を時系列で詳しく伺ったうえ、Bさんとのやり取りを確認していくと、Aさんの説明通り、Aさんから要求したことはなく、Bさんがお金や物を渡そうとする度、申し出を拒否していることが確認できました。
また、Aさんがお金や物の受け取りを拒否すると、突然、Bさんが感情的になり、Aさんを一方的に中傷するようなメッセージを送ってくることも確認できました。
結論として、AさんはBさんからお金や物を預かったり、借りたりしたのではなく、半ば強引に送られてきたものを受け取っただけであることが分かったので、仮にBさんが返還を請求して来ても返す必要はないことを改めて説明しました。
ただ、本件の問題は、お金や物を返還するかどうかという点ではなく、BさんがAさんと接点を持とうとして様々なアプローチをしてきている状況をどう解消するかという点にありました。
Bさんは、何らかの方法で、自宅の住所も把握しているようですので、Aさんの安全を確保しつつ、Bさんの迷惑行為にどのように対処するかを考えて行かなければなりませんでした。
当職からは、Bさんの物理的な接触に対しては、防犯カメラを設置するなどして証拠を保全しつつ、夜間に単独で行動することを可能な限り控えるなど自衛の措置を取っていただくしかないこと、もちろんBさんのアクションがある度、相談済みの警察署に報告をすることを説明しました。
また、請求書など当方のリアクションを要求する書面がBさんから届いている点について、結論としては、応じる必要はなく、その旨を伝えれば足りるが、AさんのリアクションそのものをBさんが求めている可能性もあるため、Bさんから連絡することは避けた方が良いということを説明しました。
要するに、Aさんにアプローチしようとしてもできず、アクションを起こす度に警察や弁護士が出てくるような状況を作ることが大事であると伝えました。Aさんから、Bさんと一切の関わりを持ちたくないので、全ての対応を引き取って欲しいとの要望があったため、当職で対応を引き取ることになりました。
Bさんの情報については、漢字フルネームと職場、携帯電話の番号しか分からない状態でした。Bさんの住所が分からなければ一方的に送ってきた物を返すこともできないため、まずはBさんの住所を調査することにしました。
弁護士会照会によりBさんが使用する携帯電話番号の契約者を調査したところ、把握していたBさんの名前で契約した人物の住所が把握できました。
そのため、Bさんの携帯電話に当職から連絡し、当職がAさんの代理人となったので、今後は一切、Aさん及びAさんの関係先に連絡をしないことを伝え、さらにAさんに送られてきた物を返還したいので住所を確認したいと申し入れました。
Bさんは当初、他人であるかのように振る舞っていましたが、途中からBさん自身であることを認めました。Bさんは、物の受け取りを拒否したうえ、その後は支離滅裂な発言を繰り返すばかりだったので、やむなくBさんの住所地に物を送りましたが、受け取り拒否により弊所まで戻ってきてしまいました。
その後、Bさんから連絡が来ることは無かったのですが、Aさんの職場のサイトやSNSにおいて、Bさんが発信者と思われる誹謗中傷のメッセージが投稿され始めたため、職場の方にも協力いただき、再度、警察に相談をいたしました。
しかしながら、警察はこのタイミングでも事件として動くことは難しいとの判断を変えず、Bさんに事実の確認と警告の連絡を入れることは対応するとの回答でした。
その後は、警察からBさんに対して警告の連絡がなされたのか、Bさんがネットでの誹謗中傷を含めたアクションを起こすことはありませんでした。
当職が介入してから、かなり長い期間を要しましたが、Bさんのアクションが止んだので、今後も警戒は怠らないようAさんに伝え、一応の終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
請求額:返還請求 ➡ 解決金額:支払いなし
刑事処分:警察による警告
その他:相手方からの接触停止
弊所では現在まで、ストーカー行為の被害に遭った方のご相談・ご依頼を多数お受けしてまいりました。元々交際関係にあった当事者間のケースもありますし、本件のように、交際関係は一切なく、一方的に好意を寄せられて被害に遭うというケースもございます。
どういったケースでも、ストーカー行為の被害に遭った場合は、最寄りの警察署に被害相談に行くことはマストであると言えます。
理由としては、不測の事態に迅速に対応してもらうことが可能になる、すぐに事件化ができない場合でも、警察署によっては被害を予防するために警告の連絡を入れてくれることがある、事情を説明し、証拠を見てもらっておいた方が事件化を希望する場合にスムーズに進む、といった点が挙げられるかと思います。
証拠上、犯罪事実の存在がある程度明確に把握できるのでなければ、警察が動くことはあまり期待できませんが、ストーカー被害のケースの場合には、他の犯罪について被害相談をする場合よりも、比較的柔軟に対応してくれることが多いように思えます。これは、過去に凄惨なストーカー事件があった際に、警察の対応が後手に回ってしまったことへの反省を踏まえた運用なのかもしれません。
ただ、どの警察署も同じように対応してくれるという訳ではなく、警察署によって対応してくれる場合と対応してくれない場合があることには注意が必要です。いずれにしても、警察への被害相談時には、時系列での事実関係を整理して、さらに相手方の言動について証拠がある場合には実際に見てもらうなど、警察がある程度客観的に事件を把握できるよう準備しておくことが重要です。ストーカー被害への具体的な対策については「別れたあとの元彼が怖い!ストーカー被害を最小限にする対策法とは」で詳しく解説しています。
本件と同様、過去に当職がお受けしてきたストーカー被害のケースにおいても、警察や弁護士が介入することにより、相手方の付きまとい行為はストップしたものの、今後、関わりを持たないことを約する合意書を取り交わすまでには至らず、事件が終結したのか確認できないものがありました。
刑事事件になり、示談の中で合意書を取り交わすということはあるかもしれませんが、ストーカー行為に及ぶ相手方は、そもそも当方と事実認識が大きくズレていることもありますし、感情的になっていることも多々あるため、きちんと終結を確認するということは難しく、やむを得ないところと言えるでしょう。何らかのきっかけにより、相手方がストーカー行為を再開する可能性は0とは言えません。
そのため、当職はストーカー被害への対応をご依頼いただいた場合、対応期間を基本的に限定せず、相手方から連絡が来る限り対応すること、また一度ストーカー行為が止んだ後も再開された場合には当職で対応することをお約束しています。
ストーカーの一般的な心理として、当方のリアクションを見たいと考える傾向にあることから直接の接点を持つべきではありませんが、こちらのリアクションが見れなければ、行為をエスカレートさせていく傾向もございます。警察と連携のうえ、慎重かつ迅速に対応していくべき類型になりますので、ストーカー被害にお困りの場合には、速やかに弊所にご相談をいただければと思います。
