職場の上司から性被害(不同意わいせつ)を受けたものの、警察からは証拠が見つからず立件は難しいと言われてしまった女性からのご相談です。民事上の交渉により、撮影データに関する誓約と示談金約160万円の支払いを受けて解決した経緯を紹介します。

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(ご相談前の状況)

上司からの性被害と刑事立件の壁

依頼者:女性(会社員)
相手方:依頼者の勤務先の上司だった男性

依頼者は、退職を間近に控えた時期に、勤務先でお世話になっていた上司と食事に行った際、その後に立ち寄った場所で、同意のないわいせつ行為の被害を受けました。抵抗したことで最悪の事態は免れたものの、身体には傷が残り、被害の際に携帯電話のカメラを向けられたことから、「映像や音声が残っているのではないか」「流出するのではないか」という強い不安を抱え続けることになりました。

依頼者は、支援団体を通じて病院を受診して診断書を取得し、警察にも被害相談を行いました。しかし、捜査の結果、客観的な証拠が見つからなかったとして、それ以上の刑事手続きには進めないとの連絡を受けてしまいました。 依頼者は被害後に適応障害と診断されて一定期間の自宅療養を余儀なくされ、決まっていた転職先への入社時期も遅れ、無給の期間が生じるという経済的な損害も被っていました。刑事事件としての処罰が難しくても、せめて「撮影データがあれば直ちに削除すること、万一流出した場合には損害賠償を請求すること」だけは正式な書面で相手方に伝えたい、あわせて休業分の損害や慰謝料も請求したいと考え、当事務所の女性専用相談窓口を通じて相談・依頼するに至りました。

弁護士の対応と解決への流れ

受任通知兼請求書の送付と増額交渉

受任後、まず職務上請求により相手方の住民票を取得して送付先を確定させたうえで、受任通知を兼ねた請求書を、本人限定受取郵便・書留により相手方本人へ送付しました。書面では、撮影データの削除と不保持、流出時の損害賠償への言及に加え、休業損害や治療費、慰謝料の支払いを求めています。

書面を受け取った相手方は、弁護士を立てずに本人として対応し、当初は100万円の支払いを提示してきました。しかし、この金額では休業損害や治療費といった実損害の補填程度にとどまり、慰謝料としては到底十分とはいえないことから、依頼者と協議のうえ、増額交渉を行う方針としました。なお、交渉の過程では、相手方は事実関係の認識について一部異なる主張をしていましたが、当方は診断書等の資料を踏まえて請求の姿勢を崩しませんでした。

当方から慰謝料を含めた250万円を提示して交渉を続けたところ、相手方から約160万円の支払い提案があり、事前に依頼者と打ち合わせて目指していた水準に達したことから、示談をまとめる方針としました。

示談書には、示談金の支払いに加え、撮影データを保有していないこと・万一存在する場合は直ちに削除すること、依頼者に今後一切接触しないことなどの条項を盛り込み、あわせて相手方から誓約書の差し入れも受けました。締結後、相手方から示談金約160万円が支払われ、初回のご相談から約3ヶ月弱で解決に至りました。

解決結果と弁護士のコメント

解決内容

  • 受任通知兼請求書を本人限定受取郵便で送付し、交渉窓口を当事務所に一本化
  • 相手方の当初提示100万円から増額交渉を行い、示談金約160万円の支払いで合意
  • 撮影データの削除・不保持や、依頼者への接触禁止等を定めた示談書・誓約書を締結
  • 初回のご相談から約3ヶ月弱でのスピード解決

担当弁護士からのコメント

性被害の事案では、客観的な証拠が乏しいことを理由に、警察による刑事立件が見送られてしまうケースが少なくありません。しかし、刑事事件として処罰されない場合でも、民事上の損害賠償請求や、示談交渉による解決ができる場合があります。本件でも、診断書などの資料を丁寧に積み上げ、粘り強く交渉することで、実損害を上回る水準での示談を成立させることができました。

また、性被害の事案では、金銭面だけでなく、「撮影されたデータが残っているのではないか」という不安や、加害者からの再接触への恐怖が、被害者を長く苦しめ続けます。示談書や誓約書にデータの削除・不保持や接触禁止の条項を盛り込むことは、被害後の生活の平穏を取り戻すうえで大きな意味を持ちます。

証拠の散逸を防ぐためにも、被害後はできる限り早く病院を受診して診断書を取得し、警察や弁護士に相談することが重要です。当事務所には女性専用の相談窓口もございますので、性被害にお悩みの方は、お一人で抱え込まず、どうぞ安心してご相談ください。