要求を断った途端に態度が豹変し、以前に受け取った品物を返せと迫られる。応じなければ大学や内定先に知らせると告げられ、警察に相談しても逆上が怖くて次の一歩を踏み出せない――。本記事では、弁護士が受任通知を送付したことで相手方からの接触が完全に止まった経緯を紹介します。
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(ご相談前の状況)
要求を断ったところ豹変し、大学や内定先への連絡をほのめかされた
依頼者は、関東地方在住の学生の女性です。学業のかたわら接客業に従事しており、勤務先の客であった男性(相手方)と、店外でも顔を合わせるようになっていました。
相手方は、依頼者の家庭の事情を知ると、自分を頼るように、父親代わりだと繰り返し述べるようになりました。依頼者はこれを断りきれず、次第に品物や金銭を受け取るようになっていきます。ところがその後、相手方の言動は変化し、結婚してほしい、一緒に住もうといった内容にまで及ぶようになりました。
決定的だったのは、相手方から身体的な接触を求められ、依頼者がこれを断った場面です。相手方は逆上し、その後も執拗に不満を述べ続けました。限界を感じた依頼者は、連絡と接触を断つことを決めます。
しかし相手方はこれを受け入れませんでした。最後に一度だけ会ってほしいと求め、実際に会った際には、また連絡を取りたい、勤務先に行く、渡した物を取りに行くなどと述べました。さらにその後は、これまで渡した品物の一覧を作成して送りつけ、返すよう要求してきました。
要求はそれだけではありません。連絡をしなければ犯罪者になるかもしれない、被害届を出してでも返してもらう、訴える、大学や就職先に問い合わせが行っても仕方がないだろう、といった趣旨のメッセージが繰り返し送られてきました。
依頼者はすでに就職先の内定を得ており、卒業を控えた大切な時期にありました。大学や内定先に事情を伝えられることは、何としても避けたい。警察にも相談していましたが、警告を出せば相手方が逆上するのではないかという恐怖から、そこから先に踏み出せずにいました。
このまま一人で抱え続けることはできないと判断された依頼者は、当事務所にご相談のうえ、ご依頼いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
依頼者に代わって、弁護士から直接通知を送付
受任にあたり、担当弁護士はまず通知の送付方法を検討しました。
当初は依頼者から相手方に書面を転送していただく方法も想定していましたが、依頼者のご家族が心配されていたこと、また警察からも今後は相手方に返信しないよう指導を受けていたことから、当事務所から直接送付する方法に切り替えました。依頼者が相手方に対して何らかのアクションを起こす形にしないことで、その後の接触の口実を与えないという判断です。
送付先については、相手方が複数の連絡手段を使い分けていたため、把握できている連絡先のすべてに宛てて通知を届けました。確実に本人の目に触れる状態をつくることを優先しています。
刑事事件化の可能性を示しつつ、誓約書による穏当な解決を提示
担当弁護士は、受任通知の内容にも工夫を凝らしました。
まず、相手方が依頼者に対して行ってきた言動を具体的に摘示したうえで、これらが脅迫罪、強要未遂罪、ストーカー規制法違反、および不法行為に該当しうるものであることを指摘しました。そのうえで、相手方の請求には法的根拠がなく、依頼者がこれに応じることはできないと通告しています。
同時に、現状では刑事事件化を検討せざるを得ないとしつつ、速やかに誓約書を作成し、今後一切、依頼者本人およびそのご家族、学校、勤務先などの関係者に連絡・接触しないこと、本件を第三者に口外しないことを約束するのであれば、穏当に解決できる可能性があると提示しました。
これは、相手方に「どちらを選ぶか」を突きつける構成です。刑事手続に進む可能性を現実的なものとして示しつつ、自ら退く道も同時に用意する。相手方にとっては、要求を続けることのリスクと、引き下がることの負担とを比較せざるを得なくなります。
あわせて、今後の連絡はすべて請求の法的根拠を示したうえで書面で当事務所宛てに行うこと、本件をインターネットやSNSで第三者に漏洩した場合にはプライバシー侵害や名誉毀損の問題が生じることについても、明記しました。
通知の送付後、相手方からの接触は一切なくなった
通知の送付後、相手方から依頼者本人への接触も、当事務所への連絡もありませんでした。
懸念されていた大学や内定先への連絡も行われず、品物の返還を求める請求が蒸し返されることもありませんでした。依頼者が金銭や物品を返すこともなく、また相手方に何らかの支払いをすることもないまま、事態は収束しています。
その後、3か月以上にわたって接触のない状態が続いたことを確認したうえで、事件を終結しました。
解決結果と弁護士のコメント
解決内容
- 受任通知の送付後、相手方からの接触が一切なくなった
- 大学および内定先への連絡は行われなかった
- 品物や金銭の返還要求に応じることなく解決
- 依頼者が相手方と直接やり取りする必要がなくなった
- 3か月以上にわたり接触のない状態を確認して終結
担当弁護士からのコメント―交際や金銭を迫られてお困りの方は弁護士にご相談を
関係を断とうとした途端に相手方の態度が豹変し、過去に受け取った品物や金銭の返還を求められるというご相談は少なくありません。
まず法的な整理をしておくと、贈与として渡された金品について、後になって返還を求めることは原則として認められません。関係が良好であった時期に自らの意思で渡したものを、関係が終わったからという理由で取り戻すことはできないのが原則です。もっとも、当初から貸し借りとして合意していた場合には話が変わりますので、当時のやり取りを確認する必要があります。
そして、返還に応じなければ学校や勤務先、内定先に知らせるといった形で相手を畏怖させ、要求に従わせようとする行為は、その態様によっては脅迫罪や強要罪に該当しうる違法な行為です。恋愛感情やそれが満たされなかったことへの怨恨を背景とするつきまといや反復した連絡は、ストーカー規制法の対象となる場合もあります。
本件の依頼者のように、学校や内定先に知られることを恐れて要求に応じてしまう方は少なくありません。しかし、一度応じたところで終わる保証はなく、むしろ次の要求を招くことのほうが多いのが実情です。
また、警察に相談していても、そこから先に進めないというご相談も多くいただきます。警告を出してもらえば相手方が逆上するのではないか、かえって事態が悪化するのではないかという恐怖から、踏み出せないのです。そうした場合でも、弁護士が代理人として介入することで、連絡の窓口が一本化され、ご本人が直接対応する必要がなくなります。そのうえで、相手方の行為が法的にどう評価されるのかを明確に示し、行為の中止を求めることができます。
本件で採った方法は、相手方の言動が犯罪に該当しうることを具体的に指摘したうえで、誓約書を差し入れて引き下がるのであれば穏当に解決する余地があると示すものでした。相手方にとっては、要求を続けることのリスクが目に見える形になります。実際、通知が届いた後、相手方からの接触は一切なくなりました。
学校や勤務先に知らせると言われている方、渡された品物を返すよう迫られている方、警察に相談したものの次の一歩が踏み出せずにいる方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
