※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(相談前の状況)
依頼者:Aさん(女性)
状況:ギャラ飲みの後、酩酊状態の中、客に性行為をされた
Aさんはいわゆるギャラ飲みで生計を立てておりました。仕事の性質上、お酒を飲むことは拒否しにくいものの、もともとあまりお酒が強くないこともあり、うまく飲む量を調整していたようです。
とある日、Bさんの開催する飲み会にギャラ飲みとして参加することになりました。AさんはそれまでBさんと会ったことはありませんでした。
飲み会の席に着くと、Aさんの他にもギャラ飲みとして参加する女性が複数名おりました。自己紹介を終え、しばらく普通に飲食をしておりましたが、Bさんらは少しずつ酔い始め、ゲームをするという話になったようです。
このゲームには負けた場合、テキーラを一気に飲まなければならないという罰ゲームが設定されていたようで、ゲームを繰り返すうち、全員がかなり酔ってしまいました。Aさんが記憶しているだけでも、テキーラをショットで数十杯飲まされたとのことでした。
元々お酒がそこまで強くなかったAさんは、歩くことも難しいくらいの酩酊状態になってしまい、飲み会の途中から記憶が無くなってしまいました。
その後、Aさんが目を覚ますと、なぜかBさんが性行為に及んでおりました。目の前の光景に驚いたAさんは必死に抵抗しようとしたものの、アルコールの影響からか体を動かすこともできませんでした。
結局、Aさんの意識はそのまま遠のき、気が付けば数時間が経過したホテルの一室で目を覚ましました。すでにBさんはその場にいなかったようです。
Aさんはギャラ飲みを仕事と位置付けており、明確にプライベートと区別していたため、これまでも客と個人的な関係を持ったことがありませんでした。記憶はありませんでしたが、少なくとも抵抗ができない状態を知りながら性行為に及んだBさんの行為に憤りを感じ、弊所にご相談に来られました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんは弊所に相談に来る前、警察署で被害相談をしていたようなので、警察にどのような話をしたのか、警察からの回答はどのようなものであったのか、確認することからスタートしました。
Aさんは警察に対して、時系列で事実経過を説明したうえ、自分は今までギャラ飲みで客と個人的な関係を持ったことがないこと、それはルールとして大事にしていることであり、どんなに酔っても性的関係を持つことを承諾するわけがないこと、Bさんらとお酒を飲んでいるときから記憶がなく、目を覚ましたらBさんが性行為に及んでいたこと、Bさんが避妊をしていたかもわからず不安な日を過ごしていることを説明しました。
警察からは、ホテルに入室する際の状況がわかるような防犯カメラの映像があれば入手すること、現段階だけでは約束はできないが、被害届を受け付けることはできるであろうという回答がありました。
Aさんから警察とのやり取りを伺い、当職からは刑事事件として話が進む可能性もあるため、まずは警察に被害届を出せるのであれば出すことを提案し、事件として正式に捜査が開始するのであれば、Bさんに弁護人がつく可能性があるので、当該弁護人と話し合いでの解決を目指してはどうかと説明しました。
その後、警察からAさんに連絡があり、被害届を出すことができるので警察署に来てほしいと連絡があり、Aさんは被害届を提出しました。この際、警察から、Bさんにはすでに弁護人がついていると説明がありました。
Aさんは、自分で直接弁護士と話し合うことは難しいと考えていたため、当職で示談交渉を引き取り、対応することとなりました。
依頼者の意向確認とリスク説明
Aさんの意向を確認すると、性被害に遭ったことや今後の不安から、高額な示談金を払ってもらわなければ納得ができないとのことでした。性被害に遭ったという辛い心情からすれば、当然の考えであると思います。
Aさんの意向をまず確認した後、当職からは、Bさんにはすでに弁護人がついており、示談金を請求するにしてもある程度の根拠が必要になるであろうこと、あまりに高額の示談金を請求すると話し合いでの解決が難しくなる可能性があること、今は刑事事件の中で示談を進めるという状況であり、Bさんもこのまま話が大きくなることを回避すべく示談を成立させることを希望するだろうが、刑事事件が終わり、民事事件として話をすることになると態度を変えてくる可能性もあることなど、リスクを説明しました。
そのうえでAさんの意向を再度確認すると、少し冷静さを取り戻したようですが、最初は自分の考えるところに従った金額の示談金を請求したいとのことでしたので、正式な提示という形ではなく、Bさんの弁護人に当方の考えているところを伝えたうえで、リアクションを確認してみようという話になりました。
示談交渉の経過
当職からBさんの弁護人に連絡し、Aさんの認識する事実や考えを伝えたところ、性行為があったこと自体は認めましたが、Aさんの同意があったという認識であることがわかりました。
そのうえで、Aさんの考えている金額は高額であるため応じることはできないが、嫌な思いをさせてしまったことに対して示談金を支払う意向はあるとのことで、確実なことは現段階では言えないが、数百万円であれば検討は可能であろうと回答がありました。
Bさんの弁護人が正式ではないにせよ出してきた金額は、Aさんの希望する金額の半分以下でしたが、同種のケースと同額程度か、あるいは同額以上の提示でした。
Bさん側のリアクションを踏まえ、Aさんと協議をすると、仮にBさんから数百万円が支払われるとしても、その金額では納得ができない、このまま刑事事件として進めてもらったうえ、後に民事事件として損害賠償請求をするのでも構わないとのことでした。
当職からは、再度、Bさんの今の態度が今後も維持されるという保証はないこと、刑事事件が終わった後には、より慎重に事案の精査を行うようになるので今よりも低額になる可能性もあることを説明しましたが、Aさんとしては、このまま刑事事件を進めてもらいたいとのことでした。
当職は、警察に示談の状況を説明しつつ、Aさんは刑事事件として本件を進める強い意向があることを伝えました。
捜査の進展と示談成立
その後、Aさんは警察の捜査へ協力をしておりましたが、警察から、客観的な証拠の収集が難航している旨の説明がありました。
また、事件は警察から検察庁に送致されましたが、担当検事の話を聞くと、客観的な証拠が乏しく、起訴は難しいかもしれないという印象を持っていることがわかりました。
このまま不起訴となれば、Bさんの弁護人との交渉にマイナスの影響が及ぶ可能性があったことから、Aさんと協議を重ね、不起訴処分が出る前に出来る限りの金額で示談を成立させる方針で進めることを確認しました。
Bさんの弁護人と示談を再開すると、Bさん側でも、本件の見通しがある程度見えてきたようで、当初話していた金額から減額した金額を提示してきました。
Aさんとしては、金額に不満はあったようですが、今後、民事事件として進めるにしても証拠が少ないことや負担がかかることを踏まえ、示談に応じることとしました。
その後、Bさんとの間で示談書を取り交わし、示談金の支払を受けて、本件は終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
結果:示談成立(示談金支払いあり)
本件のように、酩酊状態で性被害を受けたというご相談は少なくありません。このようなケースでは、被害者の記憶が曖昧なことも多く、現場がホテルなどの密室であることも相まって、事実関係の把握が十分にできないこともあります。
過去にお受けしたケースでは、当事者の関係や犯行に至るまでの経緯、防犯カメラの映像や事件後の当事者の行動などを手掛かりにして、事実関係を推測していったものもございますが、性加害の事実を否認された場合、刑事事件として進めることはもちろん、民事事件として慰謝料など損害賠償請求をすることも簡単ではありません。
上記のように、事後的に被害回復を図ることが簡単ではないということに加え、被害の回復といっても金銭による賠償であり、心身への長期間にわたる大きな負担を抱えることは避けられないことからするならば、いかにして性被害を予防・回避するかを考えていくことが重要であると言えます。
性被害に遭われた方へ
もちろん、いくら性被害を予防・回避しようと気をつけていたとしても、巻き込まれてしまう可能性を完全にゼロにすることまでは難しいところです。万が一、性被害を受けたときには、速やかに警察署に被害相談に行くようにしてください。
性被害に遭われた方から、警察への相談を躊躇して時間が経過してしまったという話もよく伺いますが、時間が経過してしまうと、たとえば、防犯カメラの映像が上書きされてしまうなど、証拠収集に支障をきたす可能性があります。また、記憶も時間の経過によって曖昧になってしまう可能性もあります。
さらに、すぐに警察に被害相談をしたという事実自体が、性被害の存在を推認させる一つの事情になることもあります。被害の事実に向き合ったうえ、警察に対して自身の認識を詳しく説明することは、大きな負担がかかりますが、後のことを考えるのであれば、警察へ速やかにご相談ください。
弁護人がついた場合の示談交渉
警察が性被害の事実について、刑事事件として捜査を進めるとなった場合、多くのケースでは弁護人がつきます。弁護人がついた場合には、本件のように、弁護人との間で示談交渉を進めていくことになります。
当然のことながら、弁護人は法的な知見を有する「弁護士」であるため、当方と全く同じ認識を持つということまではないかと思いますが、事件の見通しに対して、当方と同程度の認識を持つ可能性があります。事件が不起訴になるのかどうかを注意深く観察し、状況を把握しながら、示談交渉における態度に反映させてくるわけです。
証拠が十分とは言えず、さらに相手方が当方主張の事実を否認しているような場合には、ある程度のところで示談を成立させるのか、示談の成立を諦めて民事事件として別途請求するのかを慎重に見極めていかなければなりません。
被害の事実に向き合い、事件の見通しを観察しながら、その都度、判断をしていくことは大きな負担になろうかと思います。ご自身での対応に苦慮された場合には、弊所にご相談いただければ幸いです。
