交際を解消した後も連絡が続き、ついには自分の家族にまで及ぶ。しかし相手方は遠方におり、電話にも出ず、現在どこにいるのかもわからない――。本記事では、警察と連携しながら通知内容を相手方に届け、その後の接触が止まった経緯を紹介します。
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(ご相談前の状況)
交際解消後も連絡が続き、家族にまで及んだ
依頼者は、関東地方在住の会社員男性です。交際していた女性(相手方)に対し、関係を解消したい旨をメッセージで明確に伝えました。
しかし、その後も相手方からの連絡は止まりませんでした。さらに、連絡の対象は依頼者本人にとどまらず、依頼者のご両親にまで及びました。依頼者にとっては、自分だけの問題では済まなくなったことになります。
依頼者は警察に相談し、生活安全課の担当者が対応にあたっていました。もっとも、相手方は依頼者の生活圏から遠く離れた地域に住んでおり、電話をかけても応答がなく、現在どこで生活しているのかも判然としない状況でした。警察からの連絡も相手方に届かないまま、時間だけが過ぎていきます。
依頼者が特に懸念していたのは、自身の現在の居住地が相手方に知られることでした。警察に相談していること自体は伝わってよいとしても、相談先の警察署名から生活圏を推測されることは避けたい。そうした事情もあり、対応には細心の注意が必要でした。
このまま状況が動かないことへの不安から、依頼者は当事務所にご相談のうえ、ご依頼いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
受任通知の内容と送付方法を、依頼者の懸念に沿って調整
受任にあたり、担当弁護士はまず受任通知書を作成しました。本件では、この書面の内容そのものが慎重な検討を要しました。
依頼者からは、記載内容について複数の要望が寄せられました。相談先の警察署名を具体的に記載しないこと、書面が第三者の目に触れた場合に依頼者が不利益を受けかねない記述を避けること、相手方が読んで理解しやすい平易な表現とすることなどです。担当弁護士は、これらの要望を一つずつ検討し、法的な効果を損なわない範囲で反映させたうえで、書面を完成させました。
送付方法についても議論がありました。相手方の住民票上の住所に送付しても受け取られない可能性が高く、他方で、相手方のご実家に送付することは、第三者のプライバシーに関わるため慎重を期す必要があります。担当弁護士は、まずは本人の住所への送付を原則としつつ、受け取られない場合には電話で内容を伝えたうえで送付先を確認するという段取りを組みました。
警察と連携し、通知の内容を相手方側に伝達
並行して、担当弁護士は依頼者が相談していた警察の担当者と直接連絡を取りました。
伝えたのは、今後は当事務所が本件の窓口を引き受けること、警察から相手方に連絡する際には当事務所の連絡先を伝えていただきたいこと、そして依頼者が懸念していた警察署名を用いずに対応していただきたいことです。弁護士と警察が互いの動きを把握したうえで役割を分担することで、相手方に対して一貫した対応を取ることができます。
その後、警察が相手方のご家族と連絡を取ることに成功し、今後の窓口が当事務所であること、相手方から求められていた確認事項に対応済みであること、双方が互いの個人情報を削除すべきことが、ご家族を通じて伝えられました。
これを受けて担当弁護士も相手方のご家族に架電し、受任通知書の内容をほぼそのまま読み上げる形で伝達しました。その際、当方には事を荒立てる意図が一切ないこと、代理人として通知すべき事項を伝えざるを得ない立場にあることを丁寧に説明しています。あわせて、書面の送付先を確認したい旨も伝えました。
その後も複数回にわたって連絡を重ねましたが、ご家族側にも事情があり、最終的に相手方本人への伝達を確認することはできませんでした。
それ以上の追及は行わず、経過観察に切り替える判断
ここで方針の分かれ道となりました。
依頼者からは、相手方本人に伝わったことを確認したいというご意向が示されました。これに対し担当弁護士は、通知が相手方の生活領域に実質的に届いた以上、介入があったものとして扱ってよいと考えられること、そして相手方の言動が落ち着いている状況で執拗に接触を試みれば、かえって事態を再燃させるおそれがあることを説明しました。
所内でも方針を検討し、本人に直接ショートメッセージを送る案も含めて複数の選択肢を提示したうえで、最終的な判断は依頼者に委ねました。依頼者はご家族とも相談のうえ、本人への直接連絡は行わず、経過観察に移るという方針を選択されました。
その後、相手方のものと思われるアカウントから依頼者のSNSにフォローの申請が届く場面がありましたが、相手方と断定できるものではなく、依頼者とも協議のうえ、過剰に反応せずに様子を見る対応としました。担当弁護士は、この間も定期的に状況を確認し、相手方の動きがあった場合には警察への被害相談を含めて対応できる体制を維持していました。
結果として、通知内容が相手方側に伝えられて以降、相手方から依頼者本人への接触も、当事務所への連絡もありませんでした。6か月以上にわたって接触のない状態が確認できたため、事件を終結しています。
解決結果と弁護士のコメント
解決内容
- 弁護士が窓口となったことが相手方側に伝わり、以後の接触が止まった
- 依頼者のご家族への連絡も止まった
- 依頼者の生活圏が相手方に知られない形で通知内容を伝達
- 金銭の支払いなく解決
- 6か月以上にわたり接触のない状態を確認して終結
担当弁護士からのコメント―つきまといにお悩みの方は弁護士にご相談を
交際関係の解消後も連絡が続き、本人だけでなく家族にまで及ぶというご相談は少なくありません。恋愛感情やそれが満たされなかったことへの怨恨を背景とするつきまといや連続的な連絡は、ストーカー規制法の対象となる場合があり、警察に申し出ることで警告や禁止命令といった措置が取られることもあります。まずは警察に相談していただくことが、対応の出発点となります。
もっとも、警察が動くには一定の要件が必要ですし、本件のように相手方と連絡がつかない場合には、警察であっても打つ手が限られてしまいます。弁護士が代理人として介入することには、警察とは異なる意味があります。連絡の窓口を一本化してご本人が直接対応しなくてよい状態をつくること、そして相手方に対し、行為の中止を求める意思を法的な形で明確に伝えることです。本件のように、弁護士と警察がそれぞれの立場から相手方に働きかけることで、当事者の一方が孤立した状態で対応を続けるよりも、はるかに強い抑止力が生まれます。
また、相手方の所在がわからない、書面を受け取ってもらえないというケースは決して珍しくありません。こうした場合でも、通知が相手方の生活領域に届き、内容を知り得る状態に置かれたのであれば、介入があったものとして取り扱える場合があります。伝達の経路をどう確保するか、ご家族を介する場合にどこまで配慮すべきかといった点は、事案ごとの判断となります。
なお、この種の事案では、相手方に対して働きかけを重ねることが常に良い結果を生むとは限りません。相手方の言動が落ち着いている段階で執拗に接触を試みれば、かえって感情を刺激し、収まっていた行為を再燃させてしまうおそれがあります。本件でも、本人への直接連絡を行わず経過観察に切り替えるという判断が、結果として平穏な状態の維持につながりました。何をするかと同じくらい、何をしないかを見極めることが重要な場面があります。
元交際相手からの連絡が止まらない方、家族にまで連絡が及んで困っている方、警察に相談したものの状況が動かずお悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
