何度別れ話をしても受け入れてもらえず、1日に何十回もの連絡が続く。周囲に事情を知らされるのではないかという不安から、こちらから強く出ることもできない――。本記事では、弁護士が窓口となって関係解消の交渉を行い、相手方が求めていた3年間の分割払いを一括での清算に切り替えて、約1ヶ月で合意書を締結した経緯を紹介します。
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(ご相談前の状況)
何度別れ話をしても受け入れてもらえず、連絡が止まらない
依頼者は、海外を拠点に働く男性です。数年間にわたり交際関係にあった女性(相手方)との関係を解消したいと考え、これまでにも何度か別れ話を切り出していましたが、そのたびに相手方が受け入れず、関係が続いてきました。
相手方からの連絡は、多いときで1日に数十回に及びました。依頼者は、決められた時間帯に必ず返信しなければならない状態が長く続き、海外に滞在している間も気持ちが休まらない日々を送っていました。
関係解消の意思を明確に伝えた後も、電話やメッセージでの連絡は止まらず、さらに相手方の親族からも繰り返し連絡が入るようになりました。依頼者としては、勤務先や周囲の関係者に事情を伝えられるのではないかという懸念もあり、強い姿勢で臨むこともできない状況でした。
また、相手方の自宅には依頼者の私物が残っており、これをどう受け渡すかという問題もありました。直接会って渡せば、そこからまた関係が続いてしまうおそれがあり、かといって放置すれば新たなトラブルの火種になりかねません。
ご自身だけで対応を続けることに限界を感じた依頼者は、当事務所にご相談のうえ、その日のうちにご依頼いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
受任当日に介入し、依頼者が直接やり取りしない状態をつくる
ご依頼を受けた当日、担当弁護士は受任通知を作成し、依頼者から相手方のメッセージアプリを通じて送信していただきました。相手方の住所や連絡先が限られていたため、確実に本人へ届く方法を優先した対応です。あわせて依頼者には、相手方からの連絡手段を遮断していただき、以後のやり取りはすべて当事務所が受ける体制を整えました。
受任通知の送付後、相手方本人から当事務所に連絡が入りました。担当弁護士は、依頼者の意向は関係を解消することであると明確に伝えたうえで、相手方の言い分についても時間をかけて聴き取りました。
私物の返還も弁護士が窓口となり、直接会う機会をなくす
相手方の自宅に残っていた依頼者の私物については、当事務所が間に入って受け渡しを行いました。依頼者から当事務所宛てに荷物を送っていただき、当事務所から相手方へ発送するという方法です。
この方法を取ったのは、当事者が直接顔を合わせる機会をなくすためです。関係解消の局面では、私物の受け渡しが再接触のきっかけとなり、話が振り出しに戻ってしまうことが少なくありません。手間はかかりますが、代理人が物理的な受け渡しまで引き受けることで、そうしたリスクを確実に避けることができます。
3年間の分割払いという要求を、一括での清算に切り替え
交渉のなかで、相手方からは、関係解消を受け入れる条件として、毎月3万円を3年間にわたって支払ってほしいという提案がなされました。依頼者は、区切りをつけられるのであれば支払いに応じる意向を示しました。
もっとも担当弁護士は、この条件をそのまま受け入れることには問題があると考えました。毎月の支払いが3年間続くということは、その間、当事者間に関係が残り続けることを意味します。支払いが1回でも滞れば連絡を取る口実を与えることになり、依頼者が望んでいた「関係を完全に清算する」という目的が達成できません。
そこで担当弁護士は、総額は変えずに、3年分をまとめて一括で支払う内容を提案しました。相手方もこれに応じ、解決金108万円を一括で支払うことで合意が成立しました。
合意書には、金額と支払方法に加え、今後は互いに連絡や接触をしないこと、本件について口外しないこと、そして本件に関して双方に他に何らの債権債務がないことを確認する清算条項を盛り込みました。締結後は、当事務所の預り金口座を経由して解決金を送金し、履行を確認しています。ご相談からここまで、約1ヶ月でした。
解決結果と弁護士のコメント
解決内容
- 3年間の分割払いという要求を一括での支払いに切り替え、関係を即時に清算
- 接触禁止条項・口外禁止条項・清算条項を含む合意書を締結
- 私物の返還も当事務所が窓口となり、当事者が直接会うことなく完了
- 受任当日から弁護士が窓口となり、依頼者本人への直接の連絡が止まった
- ご相談から合意書の締結・送金まで約1ヶ月
担当弁護士からのコメント―関係解消に応じてもらえずお困りの方へ
交際関係の解消そのものは、本来当事者の自由であり、別れたことを理由に法的な責任が生じるわけではありません。それにもかかわらず、実際には「相手が受け入れてくれない」という理由だけで関係を終わらせられず、何年も同じ状態が続いてしまうご相談が少なくありません。
連絡が続く状態そのものが、日常生活に与える影響は小さくありません。決まった時間に返信しなければならない、返信が遅れると事態が悪化するかもしれない、という緊張が続くと、仕事にも私生活にも支障が出ます。本件の依頼者も、海外に滞在している間でさえ気持ちが休まらない状態が長く続いていました。
解決金を支払うこと自体は、必ずしも不利な選択ではありません
関係解消にあたって金銭の支払いを求められた場合、「法的な支払義務がないのに支払うのはおかしい」と感じられる方もいらっしゃいます。実際、多くのケースでは法的な支払義務は認められません。
もっとも、法的な義務の有無と、実際に問題を終わらせられるかどうかは別の問題です。争い続ければ、その間ずっと連絡や接触が続き、精神的な負担も時間的な負担も積み重なっていきます。金額が納得できる範囲であれば、「義務があるから支払う」のではなく「一切の関係を清算するために支払う」という位置づけを明確にしたうえで合意し、書面で区切りをつけるほうが、結果として依頼者の利益にかなう場合があります。
支払い方法は、金額と同じくらい重要です
本件で特に重要だったのは、支払いを分割ではなく一括にした点です。
分割払いは、一見すると負担が軽く見えます。しかし関係解消を目的とする合意においては、支払いが続く期間だけ当事者のつながりが残ることを意味します。振込の確認、支払いの遅れ、口座の変更といった事務的な出来事が、そのまま連絡を取る口実になりかねません。関係を断ち切ることが目的であれば、多少無理をしてでも一括で清算し、そこで完全に切り離すほうが目的にかなう場合があります。
金額だけを見て合意内容を判断してしまうと、こうした点が見落とされがちです。合意書を作成する際は、金額と同時に、支払方法や期間が目的に合っているかを検討する必要があります。
合意書に盛り込むべき条項
関係解消の合意書では、金銭の取り決めだけでなく、次のような条項を検討します。
接触禁止条項は、今後互いに連絡や接触をしないことを約束するものです。もともと、連絡や接触それ自体が直ちに違法となるわけではありませんが、書面で約束しておくことで、違反があった場合に対応の根拠となります。口外禁止条項は、本件の内容を第三者に伝えないことを約束するもので、勤務先や周囲に事情が伝わることを懸念されている場合には特に重要です。そして清算条項は、本件に関して双方に他に債権債務がないことを確認するもので、これを入れておかないと、後日別の名目で請求が蒸し返されるおそれがあります。
なお、書面で約束したとしても、接触の態様がストーカー規制法や各自治体の迷惑防止条例に違反する場合や、脅迫・恐喝にあたる場合には、別途、刑事上の問題として警察に相談することが可能です。合意書は、そうした法的手段を制限するものではありません。
お一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください
この種のご相談で共通しているのは、多くの方が「自分で何とかしよう」として長期間を費やし、その間に状況が固定化してしまっているという点です。ご本人同士では、感情が絡むために冷静な条件交渉が難しく、また、一度譲歩すると次も譲歩せざるを得なくなる関係性ができてしまいます。
弁護士が代理人として入ることで、連絡の窓口が一本化され、依頼者が直接やり取りする必要がなくなります。そのうえで、条件を書面にまとめ、明確な区切りをつけることができます。
関係の解消に応じてもらえない、連絡が止まらない、周囲に事情を知られることが不安だといったお悩みをお持ちの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
