関係を解消したいと伝えたところ、職場でのつきまといが始まり、勤務先の上司に相談したことで相手がかえって逆上。撮影されていた性的な動画を流すとまで言われる――。本記事では、弁護士が受任当日に介入し、相手方からの接触が止まった経緯を紹介します。

  • 受任当日に受任通知を送付し、相手方からの接触が止まった
  • 最も懸念されていた性的な動画の拡散は行われなかった
  • 勤務先との連携により、退職までの引継ぎ期間を在宅対応に切り替え、職場での接触リスクを解消
  • 相手方が求めていた直接の話し合いに応じることなく解決
  • 3か月以上にわたり接触のない状態を確認して終結

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(ご相談前の状況)

職場でのつきまといが始まり、性的な動画の拡散までほのめかされた

依頼者は、関東地方在住の女性です。同じ職場に勤務する男性(相手方)と交際関係にありましたが、相手方が結婚したことをきっかけに、依頼者から距離を置くようになりました。

ところが相手方はこれを受け入れず、職場でのつきまといが始まりました。同じ建物の中で働いている以上、顔を合わせずに済ませることはできません。依頼者は次第に出勤そのものが苦痛になり、職場を離れることを考えるようになりました。

思い悩んだ依頼者は、勤務先の上司にあたる管理職に事情を相談しました。管理職は相手方に対して注意を行いましたが、これが事態を悪化させます。注意を受けた相手方は逆上し、依頼者に対して、社会的な立場を失わせてやるという趣旨の発言をしたうえ、交際中に撮影されていた性的な動画を拡散すると告げたのです。動画には依頼者の顔がはっきりと映っていました。

依頼者は既に、退職して転居することを決めていました。しかし退職日までには、引継ぎのために出勤しなければならない期間が残っており、その間、職員が集まる場所などで相手方と顔を合わせる可能性がありました。

警察にはまだ相談しておらず、また、脅迫にあたる発言はいずれも対面や電話でなされたため、メッセージの履歴として残っているものはありませんでした。この状況をどう乗り切ればよいのか判断がつかないまま、依頼者は当事務所にご相談のうえ、ご依頼いただきました。

弁護士の対応と解決への流れ

受任当日に介入し、依頼者が直接やり取りしない状態をつくる

本件で最も懸念されたのは、退職までの引継ぎ期間中に、相手方が依頼者に接触してくることでした。弁護士が介入したからといって、同じ職場にいる以上、物理的な接触の可能性がなくなるわけではありません。担当弁護士は、このリスクが残ることを依頼者に率直にお伝えしたうえで、受任しました。

方針を固めた担当弁護士は、その日のうちに受任通知書を作成しました。送付の方法についても工夫しています。相手方の電話番号がわからず、住所宛の郵送では到達までに数日を要することから、依頼者のメッセージアプリのアカウントから受任通知書のデータを直接送信していただく方法を採りました。

送信の手順も具体的に指示しています。押印済みの受任通知書のデータを送ったうえで、今後の対応はすべて弁護士に依頼したこと、以後の連絡は弁護士宛てに行うことを本文として送信し、相手方の既読が確認できた時点でアカウントをブロックする、という流れです。これにより、通知が確実に相手方本人に届いたことを確認しつつ、以後の直接のやり取りを遮断することができました。

なお、この直前、相手方からは管理職を交えて依頼者と直接話し合いたいという申し入れがありましたが、担当弁護士は、依頼者が相手方と直接会うことは避けるべきであり、今後は弁護士が相手方と話をすると明確に伝えました。

勤務先とも連携し、引継ぎ期間中の安全を確保

介入後、担当弁護士は依頼者に対し、弁護士が介入した事実を勤務先の管理職に伝えるよう助言しました。事情を把握した管理職は、依頼者に対して一定期間の休務を認め、その後は退職日まで在宅での対応に切り替えることとなりました。

これにより、当初最も懸念されていた「職場で相手方と顔を合わせる可能性」そのものがなくなりました。弁護士が介入したことを勤務先が把握していたことで、迅速な配慮につながったといえます。

あわせて担当弁護士は、万一、休日などに相手方からの接触があった場合には、その場でためらわずに110番通報し、弁護士に依頼していることと担当弁護士の名前を伝えるよう、依頼者に具体的な指示をしていました。

損害賠償請求ではなく、関係の遮断を優先する方針

受任後、担当弁護士は依頼者と改めて方針を確認しました。

相手方の言動に対して損害賠償を請求したり、勤務先を通じて責任を追及したりすることも、選択肢としては考えられます。しかし本件では、脅迫にあたる発言を裏づける客観的な証拠がほとんど残っていませんでした。担当弁護士は、現状の資料から相手方に法的責任を負わせることは容易ではないという見通しを率直に説明しました。

依頼者のご意向は、相手方から金銭を得ることではなく、関係を完全に断ち切り、平穏な生活を取り戻すことでした。そこで、関係遮断を優先する方針を継続することとし、あわせて、相手方の接触が止まらない場合には警察への被害申告に進むという次の手段も準備したうえで、経過を見守ることとしました。

結果として、受任通知の送付後、相手方から依頼者本人への接触も、当事務所への連絡も一切ありませんでした。懸念されていた動画の拡散も行われていません。3か月以上にわたって接触のない状態が確認できたため、事件の終結としました。

解決結果と弁護士のコメント

解決内容

担当弁護士からのコメント―性的な画像や動画で脅されている方へ

「拡散する」と告げる行為自体が、違法となりうる

交際中に撮影された性的な画像や動画を、関係が終わった後に「拡散する」と告げて相手を従わせようとする行為は、決して珍しいものではありません。

実際に画像や動画を公表した場合には、いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)の問題となり、名誉毀損罪などが成立する可能性もあります。そして、実際に公表していなくても、「流すぞ」と告げて相手を畏怖させる行為自体が、脅迫罪に該当しうる違法な行為です。

つまり、まだ何も起きていない段階であっても、法的に問題のある行為が既に行われているということです。実際に拡散されてしまってからでは、被害の回復は非常に困難になります。ためらわずに、早い段階でご相談いただきたいと思います。

職場の上司に相談する前に、知っておいていただきたいこと

本件で事態が悪化したきっかけは、依頼者が勤務先の管理職に相談し、管理職から相手方に注意がなされたことでした。

職場でのつきまといに悩んだとき、まず上司や人事に相談するのは自然な行動ですし、本来そうすべき場面でもあります。しかし、相手方が同じ職場にいる場合、職場からの注意が「自分の立場を悪くされた」という受け止め方をされ、かえって逆上を招くことがあります。本件はまさにその典型でした。

だからといって、相談してはいけないということではありません。重要なのは、相談と並行して、あるいは相談に先立って、外部の専門家にも状況を伝えておくことです。職場は労務管理の観点から対応しますが、脅迫や画像の拡散といった問題に対しては、法的な手段を用意しておく必要があります。両方を備えておくことで、事態が悪化した場合にも次の一手を打つことができます。

なお本件では、弁護士が介入した事実を勤務先に伝えたことが、休務や在宅対応といった迅速な配慮につながりました。職場との連携そのものは、適切に行えば大きな効果を持ちます。

証拠が残っていない場合でも、できることはあります

脅迫にあたる発言は、対面や電話でなされることが多く、記録が残っていないことが少なくありません。本件でも、メッセージの履歴として残っているものはありませんでした。

証拠が乏しい場合、損害賠償請求や刑事告訴といった手段を選ぶことは難しくなります。しかし、だからといって何もできないわけではありません。弁護士が代理人として介入し、連絡の窓口を一本化して行為の中止を求めるだけでも、相手方の行動が止まるケースは数多くあります。相手方としても、弁護士が関与した以上、それ以上の行為に及ぶリスクを意識せざるを得なくなるからです。

そのうえで、今後に備えて記録を残していただくことをおすすめします。本件でも、依頼者が脅迫を受けた日時をメモに書き留めていたため、担当弁護士はそれを保管しておくよう助言しました。日時と発言内容のメモ、通話の録音、やり取りのスクリーンショットは、いずれも後の手続で意味を持ちます。

賠償を求めるか、関係を断つかという選択

被害を受けた方の多くは、相手方に責任を取らせたいとお考えになります。当然のお気持ちです。

もっとも、損害賠償請求や刑事手続に進むということは、その分だけ相手方と関わり続けることを意味します。証拠が十分でない場合には、長期化したうえに望んだ結果が得られないこともあります。

本件の依頼者が優先されたのは、相手方から金銭を得ることではなく、一日も早く平穏な生活を取り戻すことでした。その判断の結果、受任当日の介入で接触が止まり、最も恐れていた動画の拡散も回避されました。

どちらを選ぶべきかは、証拠の状況、相手方との関係、ご本人が置かれている環境によって変わります。ご相談いただければ、見通しを率直にお伝えしたうえで、一緒に方針を検討することができます。

お一人で抱え込まず、拡散されてしまう前にご相談ください

職場の同僚や元交際相手からのつきまといに悩んでいる、性的な画像や動画を撮られていて拡散すると言われた、上司に相談したらかえって状況が悪くなった、警察に相談すべきか迷っている――こうしたお悩みをお持ちの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。