交際中に受け取った援助について、別れ話を切り出した途端に返還を迫られる――。本記事では、法的な返還義務がないことを前提に交渉し、現実的な金額と時期を確定させたうえで、接触禁止条項を含む合意書を締結した経緯を紹介します。

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(ご相談前の状況)

別れ話を機に、受け取った自宅購入資金の一括返金を迫られた

依頼者は、関東地方在住の女性です。交際していた男性(相手方)から、自宅を購入する際に500万円から600万円ほどの援助を受けていました。当時、相手方からは「返す返さないという性質のお金ではない」と言われており、依頼者もそのように理解していました。

ところが、依頼者が関係の解消を切り出したところ、相手方の態度は一変し、援助した金銭を返すよう求められるようになりました。突然のことに動揺した依頼者は、その場で「承知しました」と返答してしまいました。

さらに相手方は、即時の一括返金を要求しました。依頼者としては自宅を売却して返金するつもりでいましたが、売却には時間がかかり、すぐに用意できる金額ではありません。法的に返還する義務があるのかも判断がつかないまま返金を迫られ続け、当事務所にご相談のうえ、ご依頼いただきました。

弁護士の対応と解決への流れ

法的な返還義務がないことを前提に、金額と時期を現実的な水準へ

受任後、担当弁護士はただちに受任通知を作成して相手方に送付し、以後の連絡窓口を当事務所に一本化しました。

そのうえで、請求の法的な位置づけを整理しました。本件で援助された金銭は、交際中に相手方が自らの意思で贈与したものであり、関係が解消されたことを理由に返還を求めることは法的には困難と考えられました。実際、その後の交渉のなかで相手方自身も、返還を求める法的根拠がないことを認めています。

もっとも依頼者には、関係を完全に清算したいという強いご意向がありました。担当弁護士は、このご意向を尊重しつつ、「返還義務があるから支払う」のではなく「一切の関係を清算するために支払う」という位置づけを明確にして交渉を進めました。

即時一括返金の要求については、自宅の売却が完了し、ローンの弁済や仲介手数料などの諸費用を精算して手元に残る金額が確定しなければ、支払える金額も時期も定まらないことを説明し、売却の完了を待って交渉を本格化させる方針としました。

この間、相手方本人が依頼者に直接声をかけてきたり、共通の知人を通じて連絡が入ったりする場面もありました。担当弁護士は、そのつど相手方に直接の接触を控えるよう指摘し、依頼者には身の安全を優先した対応方法を助言しました。

売却の完了後、担当弁護士は、諸費用を精算した手元の残金を踏まえ、最大470万円であれば支払う余地があることを提示しました。相手方は感情的な反論を続けましたが、そもそも法的根拠のない請求であること、交際中は自らの意思で贈与しておきながら別れる際に返還を求めるのは筋が通らないことを一つずつ指摘したところ、最終的に470万円で合意に至りました。

合意書には、金額と支払方法に加え、今後互いに連絡や接触をしないこと、これに違反した場合の違約金、そして清算条項を盛り込みました。締結後は当事務所の預り金口座を経由して送金し、履行を確認しています。不動産の売却完了を待って交渉を進めたため、ご依頼から解決までは約9ヶ月を要しました。

解決結果と弁護士のコメント

解決内容

  • 500万円から600万円の即時一括返金という要求に対し、470万円・売却後の支払いという条件で合意
  • 接触禁止条項と違約金条項を盛り込み、今後の接触を防止
  • 清算条項により、本件に関する一切の債権債務を清算
  • 交渉中の直接接触についても弁護士がそのつど対応し、依頼者が自ら相手方と交渉する必要のない状態を維持

担当弁護士からのコメント―交際中に受け取ったお金の返還を求められた方は弁護士にご相談を

交際中に相手から受け取った金銭について、別れ話をきっかけに返還を求められるというご相談は少なくありません。

贈与として渡された金銭については、後から返還を求めることは原則として認められません。もっとも、贈与だったのか貸付だったのかが争いになることもありますし、本件のように、突然の要求に動揺してその場で「返します」と答えてしまうと、それを根拠に請求が続けられることもあります。

重要なのは、支払うかどうかだけではなく、支払う場合の位置づけと条件です。関係を清算するために支払うのであれば、金額と時期をご自身が実際に対応できる範囲に収めたうえで、接触禁止や清算条項を書面に残しておくことが大切です。書面がないまま支払ってしまうと、別の名目で請求が蒸し返されたり、接触が続いたりするおそれがあります。生活圏内で接近されている場合には、その点も含めて書面で取り決めておくことが有効です。

交際していた相手から金銭の返還を求められてお困りの方、支払いを迫られて対応に悩んでいる方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。