別れ話のさなかに「治療費は全額負担する」とメッセージで伝えてしまい、後日その約束を根拠に金銭の支払いを求められる――。本記事では、請求の法的根拠を書面で整理して反論し、依頼者が金銭を支払うことなく解決した経緯を紹介します。
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(ご相談前の状況)
LINEでの約束を根拠に、元交際相手から金銭の支払いを求められた
依頼者は、関東地方在住の会社員男性です。数ヶ月間同棲していた交際相手(相手方)と関係を解消しましたが、その後、相手方から、交際中の依頼者の言動によって精神的な負担を受けたとして、治療費の負担や、知人に対する説明内容の訂正などを求められるようになりました。
相手方が請求の根拠としたのは、関係解消をめぐるやり取りの中で依頼者自身が送信したメッセージでした。依頼者は、相手方への申し訳なさから「治療費は全額負担する」「知人には事実を伝える」といった趣旨の内容を送っており、相手方はこれを約束として、その履行を求めていました。
依頼者は、自分が送ったメッセージが残っている以上、支払いに応じなければならないのではないかと考え、実際に一度は治療費の一部を支払っていました。しかし、請求がどこまで続くのか見通しが立たず、応じなければ交際中の出来事を周囲に知らされるのではないかという不安も抱えるようになりました。
このまま個人で対応を続けることは難しいと判断された依頼者は、当事務所にご相談のうえ、ご依頼いただきました。
弁護士の対応と解決への流れ
請求の法的根拠を精査し、書面で明確に反論
受任後、担当弁護士はただちに受任通知書を送付し、以後の連絡窓口を当事務所に一本化しました。依頼者には相手方と直接やり取りをしないよう助言し、請求への対応はすべて弁護士が引き受ける体制を整えました。
その後、相手方からは、請求の内容と理由を記載した回答書が届きました。担当弁護士は、依頼者から当時のやり取りの記録を提供いただいたうえで、請求の根拠を一つずつ検討しました。
検討の結果、相手方が指摘する交際中の依頼者の言動については、法的に賠償義務を生じさせるだけの違法性が認められるとはいえないと判断しました。また、依頼者が送信したメッセージについても、金銭を支払う旨の申し出にとどまり、依頼者に法的な義務を課すものとまではいえないと整理しました。担当弁護士は、これらの検討結果を連絡書にまとめ、相手方に送付しました。
これに対し相手方からは、依頼者が送信したメッセージを具体的に引用し、約束が存在することを改めて主張する反論がありました。担当弁護士は、引用されたやり取りを踏まえてもなお、請求に応じる法的義務は生じないことを、根拠を示して書面で回答しました。
その後、相手方からは書面を受領した旨の返信があり、以降、依頼者および当事務所のいずれに対しても、請求や連絡は一切ありませんでした。ご依頼から約2ヶ月で請求は止み、さらに3ヶ月以上にわたり相手方からの接触がないことを確認したうえで、事件を終結いたしました。
解決結果と弁護士のコメント
解決内容
- 治療費等の金銭請求に対し、支払いゼロで終結
- 書面による反論の後、相手方からの請求・連絡が止まった
- 弁護士が窓口となり、依頼者が相手方と直接やり取りする必要がなくなった
- ご依頼から約2ヶ月で請求が止み、その後接触のない状態を確認して終結
担当弁護士からのコメント―LINEで支払いを約束してしまった方は弁護士にご相談を
別れ話の場面では、相手を落ち着かせたい、申し訳ないという心情から、「治療費は負担する」「必ず伝える」といった約束をしてしまうことがあります。後日、そのやり取りが金銭請求の根拠として持ち出されるケースは少なくありません。
もっとも、メッセージでのやり取りが残っているからといって、直ちに法的な支払義務が生じるとは限りません。金銭を支払う旨の約束は、法的には贈与の申し出と評価される場合があり、書面によらない贈与については、履行が済んでいない部分の撤回が認められる場合があります。また、交際中の言動が不法行為にあたり賠償義務を生じさせるかどうかも、個別の事情に照らして慎重に判断されるべき問題です。
一度支払いに応じてしまうと、それが請求の継続につながることもあります。請求の法的根拠を整理したうえで、応じる義務がないことを書面で明確に伝えることによって、請求が止まる場合があります。
元交際相手から金銭を請求されてお困りの方、LINEなどで支払いを約束してしまい不安を抱えている方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
